2018/08/12

Small articles : No.036

『 一ツメ 』
素材 : 鹿角、赤珊瑚



前回の投稿の最後に
九月頭にGallery花影抄で開催されるグループ展に向けて
妖怪モノをどっかんどっかん彫らねばならなかったりして
キジムナー彫ってます
とか書きましたので

次の投稿はキジムナーかと

御期待頂いていた方にはちょとお待ち頂きまして
猫磨大師百態の行の合間合間に少しずつ進めていた御注文品
完成致しましたのでそちらの投稿をさせて頂きます

至水は注文品やらないんじゃないの!?

の件につきましては
実はコチラの御注文を頂いたのがもう数年前
まだ至水が注文製作を受けさせて頂いていた頃の品でして

ホント何年待たせているのやら・・・(汗)

最終的には
「もう全部至水さんお任せで」
全く注文製作とは言えない形で
やっとやっと完成に漕ぎつける事が出来たと言う・・・(涙)



それでは今回のお話を

今から五年程前
月刊美術の小特集で至水がピックアップされた際に誌上販売された
懐かしいですね



こちらをお買い上げ頂いたお客様より
九尾セットと合わせる提物の前飾りの製作依頼がありまして

餓えた老狐が人の子を殺め喰らってしまった事を引き金に
卑しい妖狐へと変貌して行く怪異忌憚

喰らう度尾が裂け
裂ける程に妖しい力が滾る恍惚
終ぞ九人目の血肉が胃の腑に落ちた時
九尾に裂けし妖狐「尾裂」と変わり果て・・・

そんな九尾へ至る切っ掛けとなった

初めて人の子を喰らい五十余りの齢を取り戻し
一つ目のサレコウベを愛おしむ妖狐の姿

を前飾りとして彫る事に致しました





鹿角です

一人めを喰らいすっごい若返ってしまっています
まだ尾は裂けず妖しくユラユラと蠢き出したばかり
二人めを喰らう事で尾が裂け始め
裂けた尾の数は喰らった人の子の数を表しますMAX9本






ヤシャで煮染めた後浸漬する事半日くらい
目には赤珊瑚の象嵌で妖気漲りまくらせます





指に乗せるとサイズ分かりやすいかも
変わり映えしない画ですが・・・






革製の提物にセットするとこんなです
因みにコチラの提物はGallery花影抄で御購入頂けます





一ツメから九ツメへ後戻りは叶わぬ妖しの道
前飾り「一ツメ」完成です




この一件もそうなのですが
御注文品は数年単位でお待たせしてしまい
ホント申し訳なさすぎで


お客様にもGalleryにも自分にも
三方全てに良い状況を招かないもので
苦渋の決断不甲斐なく現状新規の注文製作はお受け出来ない
と言う形をとらせて頂いております


今回も「全部至水にお任せ」と御配慮頂き
ホントもう配慮ですよすいません
やっと完成させる事が出来ました


しかしながら

既にお受けしている御注文品に関しましては
必ずや完遂させますので暫くお時間をくださいませ

因みにもう数年お待ち頂いているフルオーダー品が
根付二件と指環一件

他に「お任せ」で頂いているセミオーダー品が
根付二件と指環二件・・・


フ―ッ(震える)



2018/08/11

根付 其ノ百弐拾壱

『 猫磨大師其ノ十 - 裸猫 - 』
素材:鹿角、黒水牛角



もう半年近く猫ばかり彫り続けております至水です

猫磨大師百態の行も遂に
と言うかやっと十態めに辿り着き
ある意味一区切りとなる猫磨大師様となります

今回モチーフにしましたのが
無毛猫と言えばでお馴染みの
「スフィンクス」

至水の従妹がスフィンクスを多頭飼いしておりまして
実際に触れ合って来たのですが
無毛の肌を撫でようと掌をあて
スッと滑らそうとするもピタッと動かない
肌の質感がしっとりとほの暖かい
触れた掌が吸い付く様な・・・

そう

膝の裏

もしくは

肘の裏

正にそんな感じの触感!

真冬の函館でストーブばんばん焚いている部屋の中
無毛な裸ん坊猫は猫用服を着込んでいるにも関わらず
とにかく「寒いんです」と擦り寄って来ます
ツンを忘れたデレ全開の愛い猫でした

でそんな無毛の裸猫を猫磨大師として彫りましょうと
皺深いお顔とか彫るの超楽しそうじゃないか♪
しかし事は順調に進みませんね
「根付」としてクリアしなければならない事案も出て来たりで・・・

でも彫るよね





鹿角です

お顔に皺テクスチャ入れ終わり
ヤシャ液バシャバシャして調子を見ているところです






六面図

今回スフィンクスをモチーフにする事で
と言うか実際にある猫種を表現する為の問題点
「根付」的に難儀な部分って

「耳」なのです

フェネックとまでは言いませんが結構バビッと両耳大きく主張が強い
猫磨大師化するにあたり出来るだけ大きく「あの耳」にして
尚且つ突起量を出来るだけ少なくする様に法衣に溶け込ませました






あぁ・・・
画像だと暗くて見えませんね(汗)

今回は底面紐穴の奥深く銘を刻んだ鹿角パーツを嵌めています
結構太めの髄管があり背面の紐穴との距離も近かった為
紐穴内面の滑沢化と孔埋めを兼ねての象嵌です






「三毛」で初めてやってみた
最近お気に入りの払子の流し方です
直立正対する意匠ならば払子を左右どちらかに配置するよりも
正面に位置させた方が収まりが良い感じ






しわっしわー♪
こーれは彫るの楽しかったですよ相当楽しかった
「血管」「皺」は彫ってて楽しい二大テクスチャです






サイズはこんなでやや長めに見える感
顔も締めてるし細身な印象になりました






紐を通すとこんな

底面紐穴が深いので結び玉を奥まで呑み込みますので
紐の交換には先細なプライヤーが必要ですね






色んな角度で裸ん坊♪

スフィンクスにしては目小さいし
猫の尻尾も毛が無いとこんなで
雰囲気「鼠かっ!」ってなりますけど
うちの奥様に公開したところ初見ノーヒントで
「スフィンクスだ!」
ってなりましたので大丈夫


しょう

・・・・・

いや問題無いっす!






法衣着てるのに裸猫とは此れ如何に
根付「猫磨大師其ノ十 - 裸猫 -」完成です



猫磨大師シリーズの猫って猫又で
しかし和猫ってのじゃなく
概念としてのネコ
「人寄りの猫面」
で彫って来たのですが
やはり百態彫る訳ですからね
今後実存する猫種をモチーフにする事も多々あると思うんです

でもホラ

至水は写実下手じゃない?

んー

それなりに・・・

がむばりますハイ(涙)



さぁ取り敢えず十態めと言う事で
なんか区切り良いんじゃないって思いません?

いや実は
此処から九月頭にGallery花影抄で開催されるグループ展に向けて
妖怪モノをばっこんばっこん彫らねばならなかったりで・・・

と言う訳で

猫磨大師百態の行
其の十にて一旦のお休みとさせて頂きます
(勝手ー!)


さぁ妖怪彫んぞー!


先ずはキジムナーからな




2018/08/10

根付 其ノ百弐拾

『 猫磨大師其ノ九 - 黒毛 - 』
素材:鹿角、黒水牛角、黒檀、真鍮



絶賛続いております猫磨大師百態の行
(いつの間にか「行」になってる・・・)

前回の「三毛」と同時進行で彫り進めていたこの「黒毛」
大方の予想通り
毛色パターンつながりの猫磨大師様なのでございます

さて黒毛をどうするか?
いつもの感じでヤシャで煮染め+鉄触媒による黒変か
という手もありますが
黒水牛角で顔面パーツを製作し
まるっと象嵌する事に致しました

これならガンガン使い込まれても
染めが落ちて白猫になってしまうなんて心配はありません
三百年後も黒毛のままです

彫りますね





鹿角です

この画像をfacebookにUPしたところ御覧頂いた方々から
999の車掌ではないのか?との言及がございましたが
ちゃんと猫のお顔が嵌りますので
バンダナの巨匠が怒鳴り込んで来る事はないのですきっと
これまたサイズ小さい画像UPしてますが理由は前回でも触れた通りで・・・





六面図

お顔嵌りましたー♪

あと底面の紐穴の奥深く
よーく目を凝らしますと見えてくる至水の銘

今回大きな顔面象嵌パーツの固定保持と脱落防止の為に
頭頂部と底面紐穴内部より真鍮棒を打ち込んでおりまして
真鍮棒の頭が見えない様に銘を刻んだ鹿角パーツを嵌めています






お?
黒毛様・・・怒ってなくない?

やっぱ画像無くさないと心穏やかなのかな

俺がな






やっぱ怒ってないよー♪
穏やかなお顔だよ

珍しいな至水なのにな





紐を通すとこんなです
底面紐穴に結び玉がスッと収納
穏やかです






サイズはこんな
安定の根付サイズでやはり穏やか






色んな角度から穏やか

ここでちょっと染めの話を

今回のヤシャ煮染め
何か色味が違うの気付かれましたでしょうか

実は注ぎ足し注ぎ足し使って来たヤシャ液を蒸散させまして
土鍋で火にかけてたの忘れて空焚きですわあっぶねー(汗)

気付いた時には水分全く無くなり
土鍋の底に焦げたカリッカリのヤシャ成分がこびり付き・・・

でちょっと
ここでふと思い立ち

焦げ付いたままの土鍋にヤシャ液を追加で注ぎ入れ
しばしコトコト煮込みまして
コーヒーフィルターで濾して焦げカスを取り除いてみたところ
なんという事でしょう
焙煎ヤシャ液の出来上がり♪
これはこれで好みの色味です

不幸中の幸い転んでもただでは起きない結果オーライな展開で

すっかり心穏やかに






やはり穏やかなお顔つきで・・・
なんつーか作品は作者を写す鏡よな精神状態とかな
根付「猫磨大師其ノ九 - 黒毛 -」完成です



たまにはガン飛ばさない猫磨大師もいいじゃない?

と言う訳で
心穏やかに凪ぎの精神状態で彫り始められます次の猫磨大師様は
無毛の皺猫と言えばなあの猫をモチーフに
ある意味一区切りの十態めとなります

お楽しみに



根付 其ノ百拾玖

『 猫磨大師其ノ八 - 三毛 - 』
素材:鹿角、黒檀



前回は

「お前もう何磨大師でも良くなっているんじゃないのかっ!?」

なんて
各方面より数多くの罵声及び
陰口の筈が丸聞こえな dis 等の
猫を彫らない後ろめたさからくる幻聴や
有りもしない敵からの疑念と嘲笑を打ち消すべく
猫磨大師百態の行に再突入しました至水です

そんな猫磨大師シリーズ再開の一態めは「三毛猫」です

またもや二態同時進行で彫ってるやつ
もう一つはアレでしょ?
前に虎毛彫ってるから毛色つながりで黒毛か何かなんでしょ?
って・・・まぁ・・・その通りですけど

みなまでいうな

だぁっとれ!

じゃ彫りますよー♪
荒れてるの?ねぇ至水荒れてるの?





鹿角です

拡大してみようと画像をクリックされた方には
お分かり頂けたと思いますが
UPされている画像がサムネイルかよっ!てくらいサイズが小さいのは
実はリサイズ前の元画像を消失させてしまっていて・・・

そうです
この「三毛」の画像も数枚
所謂「鼠磨大師事件」に巻き込まれ雲散霧消しておるのです(涙)






六めん・・・じゃない
四面図

上下からの画像も消失しております・・・

因みに今回は紐穴を二つとも背面の尾の部分に配置していて
底面に出た大き目の髄管に銘を刻んだ鹿角ブロックを嵌めてあります
その画像が無いんだ(涙)






な、なんすか
画像消失させた事責めてんすか

三毛様が至水を睨むのです(涙)






俺の画像無くしたってか!?

三毛様が至水を詰るのです(涙)

いやしつこい自虐ネタはもういいですねすいませんねぇ






紐を通すとこう
紐穴は二つとも背面にまとめて設置タイプです






サイズはこんなです
しっくり根付サイズで最近安定してるなぁ






様々な角度からガン飛ばしてくる三毛様をどぞ

染めにはヤシャと酢酸鉄液しか使っていないのだけれど

ヤシャの深染で「茶」
酢酸鉄液で黒変させて「黒」
染を掻き落として「白」

と三色に染分けてみたら
これでも最近の至水にしては珍しくカラフルに見えちゃう






御立腹の表情は至水のせいではない・・・筈
根付「猫磨大師其ノ八 - 三毛 -」完成です



皆様お察しの通り猫の毛色のパターンで
猫磨大師様のバリエーションを増やそうとしている訳ですね

だって百態彫るんだぜ!?

色々と手を替え品を替えなのです

あと猫磨大師様の表情が大概ガン垂れてる件は
そういう面を彫るのが好きだからであって・・・

あぁ

そうか

結局至水のせいなのか



猫磨大師百態の行は続く




2018/08/08

緒締 其ノ弐拾参

『 鼠磨大師 』
素材 : 鹿角、黒檀



現在注文製作をお受け出来ない至水が
男気炸裂させエイヤッと依頼をお受けしてしまった


製作するにあたり頂いたお題が
・パグを飼っていた
・御父上が子年であったことから「鼠」
の二点

パグの猫磨大師で「拳犬磨大師」の根付は良いとして
「鼠」はどう盛り込もうかと

当初紐穴に続く小さな足跡を彫り込むだけで鼠を表現しようか等
色々考えたのですが

御依頼者の御父上=鼠と
御父上が飼われていたパグを
それぞれ緒締と根付として分けて製作する事に致しました

御依頼者の掌の上で
はたまた腰の辺りでゆらゆらと
御父上と愛犬パグが永遠の時間を寄り添えますように

そんな揃いの根付と緒締に致します

では鼠磨大師彫りますね♪

と言いたいところなのですが
実は鼠磨大師の画像がほとんどありません!

拳犬磨大師の投稿でも書きましたが
せっかく撮った鼠磨大師画像を詰め込んだSDカード上のフォルダを
外付けHDD上にコピー済みと思い込みフォルダ毎削除してしまうと言う
恐ろしくクリティカルな不手際をしでかしまして(涙)

HDD上のファイルならば一旦「ごみ箱」に移動されるだけですが
SDカード上のファイルは一発でサクッと雲散霧消しますからね
頭が真っ白に・・・

それでもGalleryとのメールのやりとりで添付した画像が
クラウド上に何点か残っていますので
それだけでも載せておきますごめんなさい(涙)





鹿角です

緒締等小さな作品はこんな感じで
ある程度の段階までは材から切り離さず彫り進めます
ハンドリングし易いのです






はいもう完成写真です(涙)
六面図なんかも消えました(涙)
背面の画像も残っていません(涙)






根付と緒締は紐で繋がり永遠に一緒
緒締「鼠磨大師」完成です




色々と思う所あり
完全なるフルオーダーと言う形ではなく
言うなればセミオーダーと言う形で受けさせて頂きました今回の御依頼


セミオーダーの件に関しては
また機会を設けてお話させて頂きたいと考えておりますが
抽選販売ではなかなか当選しないと言う状況から
もう少し入手する可能性が広がる手立てになると良いなと


色々と考えて行きます




いやしかし
ホント画像少なすぎて申し訳ありませんでした
(全力で寝下座しつつ)