2017/12/27

根付 其ノ百拾

『 戌男 』
素材:鹿角、黒檀



いやいや
もうあと四日で今年も終わり

これが今年最後の根付作品投稿になりますです



根付に限らずフィギュアでも人物画でも
顔の表情を造形している最中って
その造形物と同じ表情になっていませんか?

眉間にシワ寄せた憤怒の羅漢像なんて彫ったら
無意識に自分の顔も「ふんぬぬぬ」って羅漢面になってるとか
顔造形あるあるだと思っていたのですがどうでしょう

で、今回の戌男ですが

これ


至水自身なのです

所謂自画像根付ってやつですか

犬の根付彫ってたら無意識の内に「バウバウバウ」っと犬面に
更に深く深く犬彫りに没入して行くと
尻尾が生えるわ
肉球モリるわ
ワッサー毛深になるわ
終いには着ていたパーカーのフードにまで犬耳が発生しだすわで・・・

これってアルタード・ステーツかよ!

そんな根付です・・・

彫りますね!





鹿角です
既に犬化始まってます





六面図

紐穴が左腕の付け根後方な件
至水は根付装着時の厚みって結構重要だと思っていて
「顔を正面から見せたいから背中に紐穴を」
とかやっちゃうと
装着時に根付が身体から40mm位突出して邪魔過ぎ
この紐穴の位置だと厚さ20mm位になります





犬の根付を彫っていたら・・・

犬面に・・・





たるたるに弛む頬肉ぷるぷる





サイズはこんな感じ程良い・・と思う・ます





紐穴は紐の結び玉がギュギュっと収まる仕様です





色々とおまけ画像

今回のここ見てポインツ
「リューターのカールコード」
地味ながらもイイ感じにカールコード感出てて好き♪
コードが曲がるとこの隙間とヨレが効いているのだと思います





2018年は年男、戌男至水でございます
根付「戌男」完成です

という訳で来年は人生四度めの年男だもんで

「戌年に犬彫って戌男になる年男至水の自画犬根付」

こんな感じで2017年の彫り納めとなりました

まぁコレ彫った後、今現在も年末ずーっと次のヤツを彫っているのですが
そちらの公開は年明けですね

年末の御挨拶はまた改めてという事で

それでは一旦締めさせて頂きまーす



2017/12/01

根付 其ノ百玖

『 女鴉 』
素材 : 素材:鹿角、真鍮、黒檀



至水・道甫 根付彫刻2人展 
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の陸
女鴉
a.k.a
Harpy

いよいよ二人展出品作品の最後に製作した根付の御紹介となります

この根付完成したのが二人展当日の午前3時・・・
完徹で二人展初日に挑むという暴挙をしでかしてしまいましてねぇ(汗)

では先ず根付「女鴉」製作決定の経緯から

二人展初日から遡ること8日
出品作品最後の一つを何にしようかと
幾つか脳内用意してある候補から選んでいったのですが

ここまで二人展用に彫った根付と言えば
オッサンかモンスターかただの根っこ・・・

おそらく道甫さんも黒ーいヌメーッとした
深淵なるラインナップで来るだろうと推察し

ここはやはりファンタジーRPGには無くてはならない
グラマラスな半裸のフィメールモンスター根付を彫る事に決定

ただ古典根付と繋げられる
ファンタジーRPG系フィメールモンスターって何よ?と

んー

無いねぇ

じゃ取り合えず
ファンタジーRPGでフィメールモンスターと言えば?
と考え即頭に浮かんだのがハーピーでして

ではハーピーをフックに人型で羽がある古典根付と言えば?

ほら!

直ぐ思いつくじゃない!?

鴉天狗ですよ鴉天狗の根付ー♪

で、早速フィメールモンスターであるハーピーと
鴉天狗の意匠の根付をマッシュアップしてみるとですね

ハイ
見えました

雌の鴉天狗の根付!

どう?

彫っちゃうけど♪





鹿角です





六面図
古典根付に於ける鴉天狗の意匠の記号
鴉天狗+卵
コレはマストで盛り込みますよ





右面の下唇噛みしめる苦々しい顔から
時計回りに回転させると
徐々に左半面のニヤッな表情に移行して行きます
正面から見ると笑いながら怒る人的変顔に(汗)

既婚モンスターなので
口の中から少し覗く歯牙はお歯黒で真っ黒
そして引眉





抱える卵には孵化直前の鴉天狗の雛がコンニチハ

実は鴉面の鴉天狗は全て雄であると言う妄想設定その1
女型(雌)の鴉天狗は一体しか存在しません
雄の鴉天狗を無限に産み増やし続ける女王蜂ならぬ女王鴉天狗
クイーンメガラスなのです
あぁ何かメガラスってメガデス風に言うとカッコイイ
どーでもイイけど





実は女鴉の旦那は天狗であるという妄想設定その2
所謂皆さんご存知の天狗ですが
人間が目にするあの姿お顔立ちは
モンスターであらんとする虚勢の姿で
おなじみの長鼻の天狗の顔は「面」だったのです

天狗住宅に帰宅すれば今日も仕事(山の守護パトロール)疲れたねと
愚痴をこぼしながらも面を脱ぎ束の間のリラックスタイム

しかし家では女鴉の尻に敷かれる冴えない夫
些細な事で喧嘩しようものならば大事な天狗面の鼻をへし折られ涙します





サイズはこんな やや長め

紐穴は天狗面の裏側から
鼻へし折られた後に出来た空洞へ抜ける仕様です





ここ数年製作している根付全てがそうですが
ここまで彫って来た出品作品も全て
下絵や粘土モデルを用意しておりません

鹿角握ってよーいドンでガシガシ彫り進め
辻褄合わせの連続の後完成となります

いわば即興手探りカーヴィング

そんな意味でも "FREESTYLE" な "NETSUKE" なのです
What's up?





今日も今日とて旦那の鼻をへし折って余裕で子育てこなしちゃう
Queen Megarath
根付「女鴉」完成です

出品作品最期の根付「女鴉」は
先に書いた通り
捻じれまくった末に落ち着いたRPGと古典根付のマッシュアップと
いつもの至水の妄想設定大暴走
そして二人展のタイトルにある "FREESTYLE" な側面を
色濃く見て取れる根付になりました
(と思います結果的にだけど)

まぁハーピーって人面鳥体のモンスターだから
鴉天狗に結び付けるのは無理筋!
とかは言いっこなしで(涙)

さて皆様

至水・道甫 根付彫刻2人展 
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品の詳細紹介投稿に長々とお付き合いくださいまして
本当にありがとうございました

訳わからんテキストの量なんとかしろ!

ごもっとも

わかります

此処根付彫りブログですからね

しかしながら毎度申し上げておりますように

この妄想設定、解説テキスト、バックグラウンドストーリー含め
至水の根付なのでございます
お許しあれ(涙)

最期に

改めて二人展総括ブログ記事投稿しようかと思っておりますが

一先ずこれにて締めさせて頂きます

ありがとうございました!!!!!



根付 其ノ百捌

『 恋茄子 』
素材 : 人似茄子根塊、鹿角、黒水牛角



至水・道甫 根付彫刻2人展 
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の伍
恋茄子
a.k.a
Amulet of Sprouting Mandragora

今回の二人展出品作品は
ここまでプレイヤーキャラクターとモンスターばかり彫って参りましたが

ファンタジーRPGには欠かせないアイテム装備品も必要ですよね?

そこでアミュレットな根付を製作しようと思い立ち
いつか使ってやろうと思っていたあの素材を投入する事にしたのです

しかしコレ出品作品中最も議論を巻き起こすであろう大問題作なのですよ

だって

ほぼ何もしていない根付なのダカラ

先ずは見ていただきましょうね(汗)





六面図

さぁコレ何処からツッコもうか(汗)

先ず素材に記載した「人似茄子根塊」という文字ね
この根付のメインの素材
実はマンドラゴラの根の塊(本物)なのです

マンドラゴラって根が人型になってて引っこ抜くと叫び声をあげ
それ聞いた人は死んじゃうってあのマンドラゴラねって御思いの方

いやマンドラゴラって植物は実在しておりまして
和名が「人似茄子」なのです

昨年のいつ頃だったか ebay で色々と見ていましたら
マンドラゴラの根が出品されているのを見つけまして

えーこんなん売ってるんだなんつって
ebay 内検索かけてみたら出るわ出るわ

乾燥させてチップにした物からブツ切りをグラム売りする物まで

なんですか?2017年今現在も魔女がいてですよ
ebay で魔術触媒としてのマンドラゴラの根を
落札購入されているんですかと
信じたくなるくらい普っ通ーに出品されていたのですよ

で、運悪く その時眠たかったんですよね 寝落ちしましてね
タブレット端末で見ながら寝落ちしてのタッチパネルの誤操作
(落札ボタン押しちゃった?)
気付いたら落札しちゃってたんですね

げに恐ろしきは睡魔とタブレット

結局送料含め日本円で数千円也
外国人相手にキャンセル交渉する気力もなく入金してしまい

いつかコレ根付の材料にしてやんだ!って・・・

こうなりました





根っこ到着まで待つ事2週間

実際届いた根の塊がですね
表面の皺、色、細根の切跡、どれをとっても思いの外
カッコイイ♪
自然が作り出した造形美とでも言いますか
神が与えたテクスチャに結構メロメロになってしまったのです

でも漢方っぽい香りが超くさい(涙)
二人展に来場されたお客様に出汁でそう言われたくらい香るのね





本体から分岐した根や突出した部分を落としながら
極力テクスチャを残すよう丸めに形成して行きまして

あとカラッカラに乾燥させた根ですので
部分的に脆くなっている所も見られたので其処も落としました

切削面と表面の色味を合わせるためヤシャ液を塗布浸潤させ
最終的に防水効果を狙った亜麻仁油の塗布乾燥を繰り返し仕上げています





そしてテクスチャ残せる限界まで丸くしてこのサイズ感

紐は下方の紐穴より通し裏面に抜ける
結び玉がスポッと収まるシンプルなやつで
逆方向から通せば文字通り首に提げられるアミュレットとして使えます





一度バラバラに切り刻まれたマンドラゴラの根は半無限休眠に入りやがるが
そこそこ Charm 効果のある
扱いやすいアミュレットとして重宝されるんだ
でも此処んとこよく見てくださいよ
目ぇ出てるでしょう
コイツぁ再萌芽してるレア中のレア
とんでもねぇクレイジーなモンスターが
どんなに抗おうったって装着者に Charm されちまう
まるで恋の病を患った乙女みたいなもんさ
今なら安くしとくよ
Amulet of Sprouting Mandragora
27,000 GOLD でどうだい
Netsuke のエクスプローラーさんよ

なんて売り込みは置いといて
根付「恋茄子」完成です

で、何が大問題作かと言う件ですけど 
コレ殆ど何もしていないのですね

加工した所は

・丸めに切削
・紐穴形成
・目の象嵌×2
・銘を刻んだ鹿角パーツの象嵌
・ヤシャ塗布
・亜麻仁油仕上げ

うん

あとは素材のパワーでどうですかーって
そう言う根付なのです

大問題でしょ?

普通マンドラゴラの根カッコイイなぁなんて思ったら
柘植とか象牙とか使って本物と見紛うばかりの
写実なマンドラゴラ根付を彫るのが
根付のアプローチとして正常なのではないでしょうかね

でもこれ
RPGと古典根付のマッシュアップと言う今回の至水テーマから見れば

根付の始まり
腰から袋をぶら提げる際の留め具として
手頃なサイズに切っただけの鹿角の先に穴を開け
紐を通し根付の機能を持たせた鹿角の欠片

これも根付の歴史を辿れば確かに存在していた根付な訳で

この根付「恋茄子」を
根付として使える様に紐穴開けただけの
素材そのまま根付と見立てれば

マァァァァァッシュアァァァァァァッㇷ゚ッ!!!

したね?したよね?うん、したはず(涙)

あとは以前製作した 胡桃や桃種、ラドラクシャを使用した
「禍」シリーズの延長線上に位置する根付であるって事からも
マンドラゴラの根なんて怪しげな素材を手にしてしまった至水が
「恋茄子」を製作するのは必然であったと言えるのではないでしょうか

さて次は

二人展出品作6点中最後に製作した女性の根付
これもなかなかに複雑なの

続く



根付 其ノ百漆

『 蠍尾蝙蝠獅子 』
素材 : 鹿角、黒檀、赤瑪瑙



至水・道甫 根付彫刻2人展
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の肆
蠍尾蝙蝠獅子
a.k.a
Manticora

実は今回の二人展のテーマというかキーワードに「RPG」を掲げ
一番最初にイメージした根付がこの獅子の意匠でして

江戸の絵師が実際に見た事のない生物を
姿形特徴等、聞き知った情報だけを頼りに描いた画図ってありますよね

獏とか獅子なんて絵師の想像力と感性を爆発させた
ロマン溢れる想像の斜め上行くローカライズ生物が誕生したりして

例えばその当時
南蛮人の富豪が伝説の生物としてのマンティコアを
日本の根付師に製作依頼してみたらなんて想像してみるとですよ

蝙蝠ノ翼ト蠍ノ尾ヲ持ツ人面ノ獅子ナンダケドネ
チョット You 彫ッチャイナヨゥ!

なんてポポーンと大枚叩いて説明し出した
たどたどしい似非日本語のキーワードを頼りに
こんなん彫っちゃうんじゃないの?

って獅子の根付を彫ってみましょうという目論見です





鹿角です

最終的に獅子の体との質感の違いを出したいので
蝙蝠の羽には出来るだけ鹿角の皮目を残す方向で彫り進めます





六面図

意識的に古典の獅子根付の特徴を盛り込む様に
腿に浮き出るモコモコ体毛表現とか獅子ヅラとか
あと獅子と言えばの巻き毛なのですが
実はゴテゴテ盛り込まれた巻き毛が好みではないので
超控えめにしてしまいました
(ていうかほぼ巻いてない!)






至水の獅子ヅラっていつもこんななの
ミクラスが大好きなんですよねー





片足立で自立するのですが
立たせるには結構な集中力を要します(汗)
「手に取って鑑賞した後に自立させんと必死になる様を愛でる根付」
と言っても過言ではありますまい





サイズはこんな

紐穴は前足と右後ろ脚の間を紐穴の入口にしてあり
結び玉は深くまで入りますので正面からでも見え辛くなっています





犬歯より後方の臼歯部が上下で透かしているのがお分かりでしょうか

口の中は空洞に彫り込んであり赤瑪瑙の玉が入っていて
振ればコロコロと鳴く玉獅子になっているのです

因みに左面の口から彫り進め
玉を入れた後に別パーツの歯牙ブロックを嵌めています





ジャパンローカライズなマイティコアの爆誕です♪
根付「蠍尾蝙蝠獅子」完成です

マンティコアの根付に於けるRPGと古典根付のマッシュアップ
に関しては前半で書かせて頂きましたが

口伝のみを頼りに創造された獅子の根付であるという見立ての他に

古典根付でも彫られている「鵺」の様な
和製キメラのバリエーションとしての
マンティコア=蠍尾蝙蝠獅子
と言う古典根付の意匠があってだな・・・
なんてIFな妄想をしてみたり

フフフフフ

楽すぃ♪

さて次は

今回の二人展出品作品中最も議論を巻き起こすであろう大問題作

ここまでプレイヤーキャラクターとモンスターばかり彫って参りましたが
ファンタジーRPGには欠かせない装備品
アミュレットな根付を製作致します

・・・・・大問題作

続く



根付 其ノ百陸

『 花影ノ屍王 』
素材 : 鹿角、真鍮、黒檀



至水・道甫 根付彫刻2人展 
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の参
花影ノ屍王
a.k.a
Arch-Lich "The Lord of HANAKAGE"

今回の二人展は「RPG」をキーワードに自由に根付を彫る
文字通り FREESTYLE な根付が出品される訳ですが

実は至水的に核となる一本のシナリオがありましてですね





FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
Episord1
"Castle of Flowe fell into the darkness"

Nezoonorasia 大陸に散在する数十の小国を傘下に従え
一代で Hanakage 王国を築き上げた
Lord of HANAKAGE "Shien Sui"

民の信頼と卓越した政治力で平穏な統治が続く
Hanakage 王国に建立された君主の城は
至る場所に植え込まれた花木が絶える事なく咲き乱れる城で
民から"Castle of Flower" と呼ばれ愛される
正に「平和の王国」の象徴であった

Nezoonorasia 統一から十年が経った頃
唐突に Shien Sui 王が謎の病による死を遂げた

三十年に渡る統一戦争の末期十年を
一国の王でありながら数万の兵を率い前線へと赴き
数々の武勲とともに Nezoonorasia 統一を成し得た大君主の最期

それは抗い様の無い奇病による何とも筆舌に尽くし難い無残な死姿であった

偉大なる王にして尊敬する父である Shien Sui の姿に
自らの未来を重ね見るたった一人の嫡男 Shi Sui 王子は
世襲により弱冠十八の歳で王の座に就く事となった

二代目 Lord of HANAKAGE となった Shi Sui だが
父の死に際を目の当たりにしたあの日から
漠然たる死への不安と恐怖に支配され始める

世襲による若輩な王の誕生は
傘下の周辺国に不穏な空気を漂わすまでに一年も要せず

Nezoonorasia 辺境で小規模な反乱が起き始めた頃
遥か西方より旅を続けて来たという流浪の隠者が王への接見を懇願してきた

名も告げぬ隠者が急いて言うには王の命はあと三年で終わりを遂げる
戦乱の末の死ではなく父君と同じ病でこの世を去る

これは占い予知予言の類ではなく
より高々度な未来視であると

その刹那

周囲の者に気取られぬ様内に秘め
日々堆積していた死への不安と恐怖が堰を切った様に怒りとなって噴流し
気付けば手にした従者の剣は地に塗れ
眼前に今正に事切れる寸前の隠者が手に差し伸べる一冊の書本

「これを・・・」

放心の Shi Sui 王が受け取ったそれは
呪われし禁忌の魔導書 "Necronomicon" の書本であった

その夜から Shi Sui 王の死への不安と恐怖は加速度的に膨張し
手にかけた隠者が毎夜夢枕に立ち余命の残り日を告げ
Necronomicon による不死術を体得せよと詰め寄る悪夢が毎夜続いた

程なくして二代目 Lord of HANAKAGE Shi Sui は忽然と姿を消し
それと同時に
統一戦争時代に籠城戦を想定し君主の城の地下に増建された
99フロアにも及ぶトラップだらけの地下迷宮の深部より
Shi Sui 王によると思しき不死術無限詠唱の声が
昼夜問わず終日漏れ聞こえるようになった

不明の Shi Sui 王の捜索と事の真相を究明すべく
地下迷宮に送り込まれた城兵達は誰一人戻る事はなかったが

名声と報酬を目当てに周辺国の歴戦の戦士や高名な魔導士
素性を偽りパーティーに紛れる盗賊達が地下迷宮に群がった

何より地下迷宮に隠し貯め込まれた王国の蓄財の噂には
命を顧みずエクスプロールさせる程の人心狂わす魅力があったのだ

・・・・・・・・・・

Shi Sui 王が姿を消し既に150年が経つ

隠者の未来視による Shi Sui 王の余命3年が
とうに過ぎている事を知る者等もう誰もいない

しかし今も地下迷宮深部より漏れ聞こえる無限詠唱の声は止む事はなく

冥府よりの邪気孕む不穏な空気に覆い尽くされた王国は荒廃し
邪気に引き寄せられた人外なる者達が跋扈する世界へと変貌していた

かつて「平和の王国」の象徴であり
 "Castle of Flower" と呼ばれた君主の城は
見るも無残に枯れ果てた花木の影に覆われる暗き屍の城と化し
"Castle of Flower Shadow" と揶揄されながら今も尚
富と名声を渇望するエクスプローラー達を惹きつけて止まない

地下迷宮からの帰還者はまだいない





はー
やっばいやっばい超書いた(汗)

肝心の根付は至水の大好物幽霊の差し根付です
サクサク進めましょう♪





四面図
上下からの写真撮り忘れです(汗)





生きながらに死して死にながらに生きる
生死の境を超越した存在
Arch-Lich
それは不死に憑りつかれた Shi Sui 王の哀れな姿でもあり・・・

不死のモンスターの最上位種である "Lich" の中でも
最上級クラスの "Arch-Lich" です

呪われし禁忌の魔導書 "Necronomicon" による不死術の完全行使で
生身の人間から不死の躯への変成が可能になるのです





ドロドロと不定形に立ち上る姿の足元には
墓石を模した玉座が

裏面には
"RIP LORD OF HANAKAGE" と 生誕年の "1970" が見て取れますが
没年が弾け飛んでいます

これは Lich 化し不死の躯を手に入れ死を超越した瞬間を表していて・・・

因みに "1970" は至水の生誕年入れちゃった♪





サイズはこんな差し根付だから長くて大きいね

紐通しはトリッキーで
顔の下 ローブの首元が空洞になっていて
結び玉を収めるようになっており
紐は帯に引っ掛ける部分の根本内側から出る様になっています
引っ掛ける部分の裏側は縦に溝がつけてあるので
溝に沿って垂らした紐を帯毎挟み込む様に装着します
いやー伝わんないべなー(汗)





今回の出品作品全てに言える事ですが
表面処理を意識して製作してみました

「花影ノ屍王」も顔とそれ以外の部分の質感の違いを出す為に
「野晒喰」と同様の表面処理をしています

あと屍王は染めの濃淡コントラストをバッキバキに付ける様にしています

やはり型彫り根付の立体としての有りようとは別の
更に自由な表現が全然アリな差し根付が大好きです
長い型彫り根付じゃなくて「差し根付である」というところなんだけど
なー むーん 伝われー





"Castle of Flower Shadow" の地下迷宮最下層
Dungeon Level:99「冥王の間」で待ち受けていたのは
Arch-Lich と化した Lord of HANAKAGE Shi Sui であった
根付「花影ノ屍王」完成です

RPG と古典根付のマッシュアップという事で言えば
ファンタジー RPG 的不死の最上級種 "Lich" に見立てた幽霊の根付を
ドロドロと立ち上がる意匠とベストマッチな縦長の差し根付化するって事と

最終ボス戦突入すると先ず人型の魔王的なボスを相手にしますよね
竜王とかハーゴンとかエスタークとかね
で、やっとボス倒したぞ思たら
真のラスボスみたいなのが
ドドドドドドドドドドドドド
って出てくるじゃないですか

そう

至水の「花影ノ屍王」が倒されると
道甫さん製作の最期の本当の真のボスが
ドドドドドドドドドドドドド
と登場するという展示になっておる訳なのです♪

さて次は

製作順にブログ記事投稿していますので
モンスターの強さ的に順番前後している感じですが

「RPG」をキーワードに掲げ最初に思い付いたヤツ
獅子の根付をファンタジー RPG 変換しちゃうんだから♪

続く



根付 其ノ百伍

『 野晒喰 』
素材 : 鹿角



至水・道甫 根付彫刻2人展
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の弐
野晒喰 
a.k.a
Slimy Pudding Man Eater

ファンタジー RPG をプレイ開始して
先ず最初に遭遇するモンスターと言えば
スライム
ですよね?

序盤では経験値稼ぎにせっせと屠りまくられ
自キャラのレベルが上がる頃には
遭遇するだけで鬱陶しいザコキャラへと成り果てるプニプニしたアイツ

コレはやはりファミコンというプラットフォームで
ビデオゲーム式 RPG の基本フォーマットを定着させた
「ドラゴンクエスト」
による刷り込み効果であるとは思いますが

ローグライク的にはスライムと言えば攻撃受けると分裂増殖したり
装備の+補正を削られたり酸を浴びせかけられたり
むしろイヤらしい特殊攻撃を仕掛けてくる強キャラな印象なのですね
(ローグライクのザコキャラって「蟲」とか「小動物」とかそんな感じダカラ)

でもまぁ和製 RPG のスタンダードに敬意を表しまして

彫りましょう

ザコキャラとしてのスライムを!





六面図

野晒した頭蓋にこびり付く微量の蛋白質や脂質を
粘液で溶解しながら啜り喰らう飢えた粘着玉
それが
スライム
超弱いゾ!





左眼窩孔にすっぽり収まる蝸牛さん

野晒の根付で定番の意匠と言えば
サレコウベ+小さな生き物
蛙だったり百足だったり蛇だったり色々ですが
今回は「蝸牛」を合わせてみたのでした
スライムと蝸牛はスティッキー繋がりだし

あっ!でも逃げて蝸牛!
スライムに溶かされちゃうぅぅぇ(涙)





サイズはこんなで
紐を通した画像が無いのですが
今回は裏面が髄で荒れすぎていた為
そのまま紐通し穴を形成しては紐を傷めすぎると判断し
紐穴部分は髄の無い鹿角で別パーツを製作し嵌めてます





二人展に来場された海外のお客様よりの御質問
「表面処理」のお話を

今回の根付「野晒喰」では
スライムのお肌とサレコウベの表面で仕上げ方を変えています

スライムは#600の空研ぎ紙ヤスリまで掛けた後
#1000の砥粒で擦り艶を出しています

サレコウベはヤシャで染めた後に径0.3mmのラウンドバーを使用し
染めを残したい深い溝を避け
表面の染めを豊隆に沿わせた浅い溝を彫る様に剥いで行きます

最後にロビンソンブラシで全体を磨いた後に砥の粉で擦り
イボタ蝋を擦ったブラシで磨いてこんな感じに

マットなサレコウベの骨感と艶のあるスライム肌という
質感の違いを表現しています





野晒すも 命繋げし 糧となり
根付「野晒喰」完成です

さて「野晒喰」に於ける RPG と古典根付のマッシュアップの件

今回先ず RPG に欠かせない
ザコキャラとしてのスライムを彫りましょうという所から
根付の定番意匠でスライムとマッチするものって何?と考えまして

いやそんなの無い訳ですよ!

で、低価格で御提供出来るこじんまりとしたサクッと彫れる意匠である事
とかも絡んで来ましてですね

コレしかねぇと頭に浮かんだのが「野晒」の意匠
サレコウベならサクッと彫れるし♪

野晒の根付を「死は次の生の始まり」を表す意匠と見るならば

「野晒したサレコウベを喰らい生を繋ぐスライムとかどう?

ハイ来たマッシュアップ成功でしょ!!!

こじつきましたよっめでたいっやったよっ(滝涙)

失礼、取り乱しました

そんな見立ての「野晒喰」でしたという事で

さて次は

今回の二人展は「RPG」をキーワードに何かファンタジーっぽい?
それっぽい根付を並べてみましたーって言うのではなく
実は一本核になるシナリオがあってですね

ゲームも大詰め艱難辛苦を乗り越えダンジョン最下層
「冥王の間」に辿り着いたパーティ御一行を待ち受けていたのは
"Lord of HANAKAGE"
最終ボスの登場です

彫りますよ♪

続く



根付 其ノ百肆

『 屈強髭族根付戦士七年目 』
素材 : 鹿角、黒檀



至水・道甫 根付彫刻2人展 
FREESTYLE NETSUKE DUNGEON
出品作品其の壱
屈強髭族根付戦士七年目
a.k.a
Level 7 Dwarf Netsuke Warrior


二人展出品作第一弾は自らを投影したPC(プレイヤーキャラクター)

先ずはキャラメイクからスタートですよね

至水は恰幅よろしい年中髭面男子なので種族は「ドワーフ」を選択

自らを投影と言えば職業は「根付戦士」一択でしょう

あと至水は根付製作始め今年で7年目なので
1年=1レベルで換算しますと 7年目=Level 7

至水の"FREESTYLE NETSUKE DUNGEON"は
Level 7からプレイ開始させて頂きます♪

なんというチートプレイ!

という事で至水のPCは
Level 7 Dwarf Netsuke Warrior
になりましたというお話

そんなん彫りますよ!





鹿角です





六面図

基本的に装備は彫りながら考えてます
「何着せよっかなー」なんて
チェインメイルを選択した自分を呪いましたよね
編み鎖をチマチマチマチマそれっぽく彫ってさー(涙)





手には暗闇のダンジョンを照らすランタン

根付業界を小さな灯り一つ手探りで進む至水です(涙)
でもドワーフって Infravision:50ft のボーナスがあるので
実は結構良く見えてるのかも・・・よ






"Pauldron of Darkness"
「暗黒の肩当」


ゲーム開始早々 Dugeon Level:1 で拾った Chaotic なアーティファクト

コレ装備したせいで黒ーい根付ばかり彫る事になったらしいのね
装備した瞬間永続的な Cursed 状態になるので装備外せないし
でも今至水が根付で食っていけてるのは
このぶっ壊れたゲームバランスのおかげですよ暗黒感謝(涙)






"Shield of SHISUI"
「至水の盾」


初代 Lord of HANAKAGE より授けらた「至水」の銘を刻んだ盾

元々「死水」だった雅号を花影抄での作品取り扱い開始時に
「縁起悪そな」という理由で「至水」に変更したのですが
暗黒戦士時代の戦いっぷりは隠しきれず
今でも度々「死水」の顔を見せてしまうのです
あと提物は超シンプルな実戦実用的饅頭根付で提げられてます





踏みつけられるスライムさん

一つ目のスライムと言えばモンスターファームですか
まぁコレが何を意味しているかは・・・
いいんですいいんです
深い意味なんて無いんです(涙)





武器もさー・・・根付戦士的に
"Sword of HAMAGURIGANGI" 
とか
"Tsuru-Kubi Iron Claw"
なんてのも考えていたのですけど
やっぱドワーフの武器と言えばアックス系が良く似合うわー♪
根付と関係無くなっちゃいましたけども・・・後悔は無い





サイズはこんな
今回の二人展出品作品全て紐通し画像を撮り忘れてしまいまして
こちらの根付はアックスの裏
股の間下方から紐の結び玉を収め
背中の紐穴に抜ける仕様となっております





「ドっワぁーフぅ―っ女ぁーにゃ髭がっあるぅー♬」
(だからドワーフって Stealth がマイナス補正されるんだぜ?)
根付「屈強髭族根付戦士七年目」完成です

で、前振り投稿で書きました
「RPGと古典根付のマッシュアップ」的解釈をこじ付けるとですね

このドワーフの根付は古典で言うところの「南蛮人」の根付であると

「南蛮人」は数多く現存している古根付の意匠の一つですが

18世紀当時
和装で髷を結い低身長だった(であろう)日本人にとって
日本を訪れるヨーロッパ人の奇異な装束や人種的な見た目の相違等
物珍しい異文化の到来は根付の題材として面白がられ
人物根付定番の意匠として彫られていたのではないでしょうか

ドワーフも「人」とは異なる「亜人種」
キャラメイクの際に選択する「種族」の一つです

現代の日本人にとっての「南蛮人」=「ドワーフ」である

という見立ての根付なのでした

さて次は

ファンタジーRPG定番の最弱キャラである
スライムを古典根付の意匠とマッシュアップしちゃうぜー

続く