2015/06/29

至水・光訓 根付彫刻展 終了致しました


遅ればせながら 
6月21日に無事閉幕となりました 
御来場頂いたお客様方へ感謝の気持ちでいっぱいです
ありがとうございました 

至水は北海道函館市在住です
在廊させて頂いた初日からの三日間で 
実際に沢山のお客様や沢山の作家の方々とお会いして 
これからに繋がる濃密なお話が出来た事が何よりの収穫でした

会期中刊行された美術手帖 [2015年7月号] の展覧会広告では
ありがたい事に「ぬらりひょんと幽谷響」をピックアップして頂きました 

ウェブ時代の根付師の在り方の一つとして
「お客様はPCモニターの向こう側に必ず居る」 
を信じつつ 

これからも根付極北の地北海道にて
根付彫刻に精進して参ります

今後とも宜しくお願い致します 


Small articles : No.023.5 (番外編)

提げ 『おにぐるみん
素材 : 胡桃、鹿角、革、真鍮

今回の二人展では胡桃を使った提げと根付を出品したのですが
ではなぜ胡桃を使おうと思ったのか? 

丁度「貉」を彫っていた頃
二人展用に根付ばかりでなく 
小物も出品しましょうという事で思案していたところ

以前ぼたんやさんのブログで拝見していた
鬼胡桃を裏返すと反対側が鬼の顔になっていた!という 
鬼胡桃の根付がずっと頭の中にあって 
「鬼胡桃を割ったら中に鬼が!」
そんなぼたんやさんを勝手にリスペクツな
鬼胡桃鬼の根付を彫りたいな♪ 

なんて考えていたのを思い出し 
ホントは象牙なんかでまるっと型彫りするのが筋なのでしょうが
「象牙型彫り鬼 in リアル鬼胡桃」 を画策し 
Amazonで鬼胡桃を購入するに至ったという・・・ 

で、いざ鬼胡桃鬼を彫るにあたり
鬼胡桃の殻が欠けないようにキレイに真っ二つにしなきゃとか 
そもそも鬼胡桃の内部構造を知らなきゃとか 
試行錯誤込みで色々やった結果 

産み落とされたのがコイツ・・・
くるみの国 非公認ゆるキャラ 
おにぐるみん♪ 

えっ?

「鬼胡桃を割ったら中には鬼胡桃鬼!」はどしたの? 

まぁ色々実験的に弄ってる内に

全くの別物が爆誕するという・・・ね

  
ほらほら鬼脚が動くから座ったり出来るんだお♪ 

・・・・・

もうしわけないっ(涙) 


こんな感じなので販売は出来んと 

でも二人展でコッソリ並べといて 
何コレっ !? って笑ってもらえたら 
コイツも浮かばれるかなと持って行ったところ 

超奇特な方の元に嫁いで行く事になりました 
ホント重ね重ね 
もうしわけないっ(涙) 

そんな訳で 
至水の「至水・光訓 根付彫刻二人展」出品作品 
ブログ投稿はこれで全て終了で御座います 

長々々々々々々々々ーっと
お付き合い頂き有難うございました! 


根付 其ノ陸拾陸

祈願
素材 :胡桃、鹿角、黒檀

さて
提げ「禍」で初登場した素材の胡桃
実はこれAmazonで購入したものなのですね
(何でも売ってんなAmazonっ ありがたいよ) 

胡桃で何か彫ろうと思い立ち
和胡桃=鬼胡桃が欲しかったので
Amazonで色々と「鬼胡桃」で検索していたところ 
和グルミ(殻付き・700g) 
というのを発見 

で販売ページを見に行くと
どうやら一般社団法人 和グルミプロジェクトのマーケットプレイス商品で
・じぇじぇじぇ!「あまちゃん」でおなじみになった
北三陸の郷土料理「まめぶ汁」。
このまめぶ汁に使われる必須の食材が和グルミです。 
・収益はすべて被災地支援の活動費にあてられます。
・被災地三陸の復興を願う和グルミプロジェクト。
2014年秋に収穫した天然の和グルミ(オニグルミ)の殻付きです。 
被災した地域の方々の手によってひとつひとつ拾い集めていただき 
洗って乾燥してもらいました。 
等と書かれています

どうせ買うなら多少なりとも復興支援になればと思い
こちらから購入しました

そんな謂れのある胡桃です
そうだ胡桃達磨を彫ろうと思い付きました

達磨の目は大願成就の祈りを込めて
先ず片目を描き入れますよね
で願いが叶った暁にはもう片方の目を入れ祝う

この根付「祈願」の胡桃達磨も
右目をしっかり瞑っています
震災被災地が復興を遂げたその時
必ずや右目を開けてくれるはず・・・

そんな祈願を込めた根付を彫りますよ!


胡桃の殻に鹿角製の達磨フェイスを嵌め込みます


六面図


渋い佇まいです
胡桃イイなぁ・・・


紐通し周り
結び玉受けに銘入り鹿角パーツを嵌めてます


復興の行く末をしっかと見つめる左目と
硬く閉じられた右目・・・
開いてくれる事を祈る


復興祈願だ胡桃達磨!
根付「祈願」完成です

あまり震災や復興というのは絡めない方が良いんじゃない?
と友人から助言されたのですが
そもそも根付には何かしらの隠喩を忍ばせたり
思いや願いを込めたり
そういうもんです!

2011年3月11日以降
ホントに何も出来ない自分が情けなく
ブログ経由で初めて被災地の方から根付の御注文を頂いた際
こんな自分に出来る事は
やっぱり根付を彫る事でしかないんだと再確認した事を思い出し

この胡桃の出自を知ってしまった以上
彫らずにはいられなかったのです

700gの鬼胡桃はまだ沢山残ってますんで
胡桃の何か
まだまだ彫ります♪


Small articles : No.024

提げ 『
素材 : 胡桃、象牙、黒檀

折角王道の白根付師である加賀美さんと御一緒させて頂くのだから
思いっきり黒い方向に振り切ったモノをと 
妄想してみます・・・・ 

現世に存在する草樹 植物達は
日々大気中を漂う悪気邪念を取り込み 
地表に舞い落ち土中に浸積する邪気を吸い上げ 
蓄積浄化する役割を果たしていますが 
太平が乱れ邪な気運が世に溢れ続けると 
終には浄化の限界に達し樹内飽和を引き起こします 

飽和した邪気は開花の際に再び大気中に拡散し循環されます 
邪気蓄積浄化能力の高い笹や仙人掌等が開花してしまう場合 
深刻な邪気汚染が進んでいると考えられるでしょう 

それでも開花循環によりゆっくりとゆっくりと浄化は進みますが 
ごく稀に邪気を含んだ果実が結実してしまう事があります 

その果実が内包する種子は
災いを孕んだ禍の種子なのです 

決して芽吹かせてはいけない
最凶最悪な災いの果実を撓わに実らせる 
禍の樹に育つのだから 

そんな禍の種子「禍(マガ)」を彫りますよ


六面図 
胡桃の表面に薄っすら見える 
編み目模様のテクスチャを強調彫りしたり 
有機的なディテールを彫り込んだり 
開眼させたり・・・ 
何かもー没頭しちゃってキリが無くなってきます
「禍」の黒い呪力の仕業かも・・・


色んな角度で禍の種子を観察して見よう 
ゲッ!目が合った 
気色悪っ 


サイズはこんな 
まぁ 
胡桃の大きさですわね 


提げるとこんな感じです 


決して芽吹かせてはいけない禍の種子 
提げ「禍」完成です

次の胡桃ものに続きます♪



根付 其ノ陸拾伍


素材 :鹿角、鯨歯

当初は「白坊主」として製作をスタートしたのですが
丁度のっぺらぼうな顔の部分が 
鹿角から頭骨に移行していく部位で結構粗く
白坊主なのに真っ白にはならんなという事で
製作途中で色々と設定追加変更して 
完成まで辿りついたのが
この「貉(ムジナ)」なのでした


鹿角です 


六面図

  
彫っている最中 
腰を捻り括れを付けていくと 
結構な量の髄が顔を出して来ましたので 
カバーすべく鯨歯製の「酒入り瓢箪」を嵌める事にしました 
その段階で 
「この貉は酔っぱらって人を驚かそうとした」
という新たな設定が乗っかります 


酔っているせいで完全な変化が出来ていない 
「左手は貉のままだし尻尾が出ちゃってるよ」 
という設定が更に乗っかります 


うふふと笑う 
aka白坊主さん 
「酔っているせいで完全な変化が出来ていない」
という設定を利用し 
胸の髄露出部分を削り込み此処を紐穴にすると 
紐の結び玉の端を毛羽立たせ紐穴に納めれば 
御確認頂けるだろうか 
「胸毛の如き貉毛がハミ毛って見える!」 
というギミックが追加されます


てな具合で製作途中に 
どんどん新たな設定を乗っけられた貉さん 


以前は鹿角の髄が嫌で嫌で仕方が無かった至水ですが 
今はもう気にならなくなってしまったと言うか 
逆に景色として楽しめるようになってしまったと言うか 
「もっと素材選びに気を遣え」
なんてお声も聞こえてきそうですが 
(いや聞こえる)
妖怪や闇の眷属達の素材には最良のテクスチャだなと
逆に気に入ってしまって・・・ 


サイズはこんな 


酔っ払った勢いでニンゲン驚かして うふふふ 
根付「貉」完成です 

御注文品では無理ですが 
今回の二人展のように好き勝手製作出来る場合
  
下絵もモックも無しで勢いエイヤッと彫り進めちゃうと 
新たな設定やギミックがどんどん追加され 
結果凄くイイ! 
って事が多かったりもするのですよねぇ♪ 


Small articles : No.023

提げ 『送狼
素材 : 象牙、真鍮、黒檀

完全なる昇華を迎えるべく 
製作を決定したアイツ 

でかい目玉のネズミっぽいアイツ

暁斎百鬼画談には勿論研究書等にも
決定的な
「コレはアノ妖怪ダ!」 
という記述を見つけられず 

困った時の
オオカミと記されているだけ 
モノノケとしての獣「狼」もあるでしょうけど・・・

ここでハッと思い出した

送狼!

竜斎閑人正澄画『狂歌百物語』中の送狼 

いいねいいね♪
もう送狼にしか見えなくなってきたよ 

何せ初めはネズミ絡みの何者かかと思っていたのだから 
最高の解ですよ 

もーチミは送狼に決定! 

という事で送狼彫るよ♪


ぬらりひょん、幽谷響に合わせて象牙使ってます 
画像は一度ヤシャで染めた状態 


四面図 


小っさいよ 


幽谷響同様 
細長い手足は提げとして使用した際に 
破損のリスクが高くなるので 
キュッと纏めちゃってます 


暁斎百鬼画談では顔の左側面しか確認出来ません 
反対側の目は勝手に普通サイズにアレンジしちゃいます 
こーいうのが凄い楽しーの♪ 


提げるとこんな感じ 


もー私には送狼にしか見えないの 
提げ「送狼」完成です 

せっかく暁斎百鬼画談のぬらりひょんの場面 
三体を全て立体化したのに 
ぬらりひょんと幽谷響を先にGalleryに発送してしまって 
三体並んだ画像が無いという大失態(泣) 

それでもしっかり 
至水の行き場の無い怒りは昇華されました♪ 
楽しかったです 
ありがとうございました!





PS
暁斎様は草葉の陰でウププと笑っておられるかもしれませんね 
「アレ送狼じゃないのに」・・・と 


緒締 其ノ拾肆

幽谷響
素材 : 象牙、黒檀


ある怒りを原動力に
暁斎百鬼画談のぬらりひょんを立体化しようと
鼻息荒くする至水さん

一緒に描かれている幽谷響も緒締にしてお供させますよ

ええ彫りますとも!

六面図


幽谷響のキメポーズと言えば
掌をピロッと水平にして左右両横方向に小さな前ならえ?
フライングゲッツなこのポーズなのですが

緒締で使用する際に小さな突起となる掌や細い腕は
破損のリスクが高すぎるので
頭を抱えて頂きました  
ウプププ


あらよっと♪
背骨のカーブも気持ちイイ


ぬらりひょん様~一生お供するでげすー
緒締「幽谷響」完成です


これで暁斎百鬼画談のぬらりひょんの場面完成ー

・・・と
いや、まてよ

幽谷響の後ろにもう一体
目玉のでかい奴いるよね

やはり三体彫らにゃこの場面を立体化したとは言えますまい?

完全なる怒りの昇華を迎えるべく

もう一体

彫ります・・・


根付 其ノ陸拾肆

ぬらりひょん
素材 :象牙、赤珊瑚

6月に三菱一号館美術館で河鍋暁斎の展覧会がある
というのを何かで見て知っていて

二人展で東京に行ったとき見に行けるかも♪ 
と、暁斎ラヴな至水は密かに画策していたのですが 
初日が6月27日っ!?

行けないじゃない(震え止まらず) 

ムキーッ !!!!!

という何所にぶつけて良いか分からぬ怒りを
根付で昇華させようと試みます 

暁斎版百鬼夜行である
暁斎百鬼画談より 
ぬらりひょんが描かれている場面を立体化! 
幽谷響を緒締としてお供に付けちゃいますよ !!!

彫るよー(滝涙)


今回は象牙です 

もー超楽しいヨぬらりひょん!
過去最高に彫ってて楽しい !!!
どんどん昇華されていく至水さん♪ 

六面図 
ビッシビシ昇華されていく至水さん♪ 

暁斎のぬらりひょんに数珠は付き物 
着物は法衣を着せるのが筋なのでしょうが単物に 
左手の扇子は石燕のぬらりひょんから頂きます 
益々昇華されていく至水さん♪ 

頭部の形状を起こすのは彫りながら 
気持ちの良いラインを探しつつ彫り進めます 
たっ・・楽しい・・・ 
ガンガン昇華されていく至水さん♪ 

キリッ! 
紅い瞳は赤珊瑚です
密漁ダメ絶対! 
モリモリ昇華されていく至水さん♪ 

紐穴ーっ! 
てくらい潔い紐穴 
紐穴ダイスキ♪ 
グイグイ昇華されていく至水さん♪ 

サイズはこんなです 
そんな事にも昇華されていく至水さん♪ 

ありがとうキミを彫れて良かったです(涙) 
根付「ぬらりひょん」完成です 

そして完全に昇華された至水さん♪ 


で、次は勿論お供の緒締な幽谷響
続けて投稿しちゃうよ! 


根付 其ノ陸拾参

舟幽霊
素材 :鹿角、黒檀


以前製作した龍亀
獣毛付きの鹿角を使い甲羅に毛の生えた蓑亀ならぬ
蓑龍亀として彫り進めていたのですが
煮染めの段階で骨組織と皮の接合部が給水膨張してしまい
結果獣毛部位を撤去せざるを得なくなってしまいました

で、彫っている最中この甲羅と毛の塩梅が
髷を解いた落ち武者ヘッドに見えてきてしまい
なぜか

舟幽霊彫りたい・・・

って思ってしまった訳なのです

まぁ何時もそんな感じで題材は降ってくるもので・・・

舟幽霊彫りますよ♪

素材はこんな
根元に鹿の毛が残る鹿角です


イイ感じに後ろ髪残ってます


六面図
今回は慎重に煮染めの時間管理した甲斐あって
キレイに毛が残せました


舟幽霊は海で亡くなった者の御霊なのですが
海の生き物にとって御遺体は御馳走なわけで・・・

御馳走にありつけた蛸が着物の中蠢いていて
あちらこちらに蛸足がニュルニュルとコソバユイので
両手でしっかと掴まえた図
になります


紐穴は着物の破れ
足元には波をあしらっております


丁度顔の辺りは鹿角から頭骨への移行部で
目の粗い組織になっています
オドロオドロしさが加速しますね


舟幽霊と言えば柄杓!ですよね
蛸捕獲に集中する為後ろの帯に挿しといた柄杓
蛸がこっそりパクろうとしていますよ


サイズはこんなで


はたしてその手の中に蛸はいるのか・・・
根付「舟幽霊」完成です

後ろ毛は是非実物を見て撫でて頂きたいところ
キューティクル艶々なのですー♪