素材 : 鹿角、真鍮、黒水牛角
2022年夏のグループ展「勿怪の幸い」第三集出展作品其の二
それは京都の大徳寺真珠庵が所有する絵巻に初登場した後
数々の絵師が描いてきた所謂「百鬼夜行絵巻」のなかに
当たり前に現れるあの赤くてぶよっとした一つ目のアイツ
姿形が近似な「大化」や「ちからここ」は至水的には別物だし
後に荒俣宏氏に「蟇怪」と記載されるも便宜的な命名で
やはり赤いアイツは今でも名も無き「赤いやつ」…
赤いやつの元絵を見ていると
腹の下からちょろっと伸びてるこの触手?
「あれって超発達した感覚器官なのでは?」
などといつもの妄想が加速してしまい…
至水妄想奇譚
「ウロボロス進化論」
生命の危機を回避するために発動した特定の進化が原因となり
その危機を誘引する身体的要因の改善が阻害される負のループに陥った場合
補完するもう一つの進化が加わる事で
その身体的要因を保持または増大させながらも
生命の危機をゼロリスクにまで到達させる
加速度的な進化のサイクルが完成した状態をウロボロスと呼ぶ
否が応にも目を引いてしまう紅い大きなブヨブヨした躰に対し
あまりにも貧弱な前肢しか持たない「赤いやつ」は
絶望的に緩慢な動作故に降りかかる生命の危機を
超早期に察知するための感覚器官を著しく発達させる
という進化形態を獲得した
半径1㎞範囲を見通す大きな単眼は結像補正を含めた有効視野角360度を誇り
時にはXレイヴィジョンがパッシブに発動可能
加えて優れた視覚感知を過剰に補強するとされる腹孔から萌出した神経鞭は
空気の振動を聴覚信号に、大気中の浮遊分子を嗅覚信号に其々置換し
半径3㎞範囲の地の振動を拾い、100c㎥単位の大気温変化を把握可能
索敵に関して微塵の隙も無い進化を遂げているのだ
しかし実際には
最大半径3㎞範囲に発現した危機を超早期に察知し
即座に回避行動を開始したところで
その絶望的に緩慢な動作故に回避間に合わず
余りある危機察知能力は意味を失い
確実に大槌の一撃をくらう事となる…
のだが
高衝撃吸収性と高反発性を兼ね備えた弾力のある体組織は
あらゆる外的ダメージを雲散霧消させる効果を持ち
ソフトシェルタイプのスーパーアーマーとして機能するため
生命の危機どころか掠り傷一つ負うことはなく
やはり赤いやつは究極にアンブレイカブルな進化を遂げた妖怪
と言えるのではないだろうか
1・貧弱な前肢しか持たず絶望的に動作が緩慢故に常在する生命の危機
(進化発動因子)
2・危機を早期に察知すべく感覚器官の発達が進む
(進化 α 誘引)
3・結果貧弱な前肢の発達が遅れる
(前肢の進化獲得順位下降)
4・感覚器官の発達速度を補うべくスーパーアーマーの発達が進む
(進化 β 誘引)
5・結果貧弱な前肢の発達が更に遅れる
(進化発動因子の増大)
6・2に戻る
(進化の加速度変数を乗算)
なるほど
正に「赤いやつ」はウロボロス進化論を体現した妖怪なのだ
終
はい
腹の下のちょろっとしたアレだけで妄想が過ぎます
そんな進化論無いですしね
けしからんですね
今回のグループ展「勿怪の幸い」第三集は
1作家につき根付1点と提げ1点という出展枠制限があり
これはつまりフルスペックな根付はどうしても高額になるため
もう一つはお手に取って頂きやすい価格帯の小物をという振り分けで
それならばと
白いままで良いから染めの工程無くせるしと
「白うかり」の提げを彫り始めたのですが
彫り進めるうちにどんどん手を掛けちゃって
結局染めたし根付にしたし
とても提げ的な低価格での販売は無理なものになってしまい
あー至水は素人だねぇ…
急遽もう一つ
ちゃんと価格を抑えられるものを用意せねばと考えていると
不意に脳内で「勿怪の幸い」第三集での至水の裏テーマが光り輝き発現し
よしアレで行ける!
と彫り始めたのがこの赤いやつ
根付「魔ガ刺ス」は誰も知らない至水が創作した名も無き物の怪で
緒締「紅いの」は妖怪LOVERなら誰もが知ってる名も無き物の怪…
そうです
今回の「勿怪の幸い 」第三集
至水の裏テーマは「名も無き物の怪」だったのです
で、白うかりは?
勿論Galleryの販売ページに並びます
至水の根付彫刻は年中「勿怪の幸い」みたいなものですからね
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