素材:鹿角、ユーカリナッツ、黒水牛角
フェアのテーマが「深淵」だったので
一応再度原典の雰囲気に触れておこうと
数十年前に購入しカサッと読んで途中で挫折したコレを
書籍貯蔵箱から発掘して読み返そうとチャレンジしたものの
読了前に根付は完成してしまい…
至水妄想奇譚
「Ten percent of the brain myth」
2122年、脳科学者ヒルデガルド・ベルガーにより公表された論文
「特定の精神状態に於ける脳機能局在の変異観測」に端を発し
脳科学、宗教学、民俗学、心理学の各カテゴリに属する研究者達の
数多の犠牲を以て成された「カオス」の概念的統合は
真カオス学会創立の試金石となり
「人間の余剰能力解放の能動的発現」
にまで至らせるパラダイムシフトとなった
2200年代初頭より加速度的に増大を続けた陰惨な猟奇事件の数々
関連する被疑者達のバックグラウンドに共通し存在する邪神崇拝は
世界的な拡がりを見せる深刻な社会問題と化していた
被疑者の精神鑑定に於いて使用されていた
旧来の脳パルスメータが一様に示す特異な波形について
真カオス学会関係者へ漏れ伝わるまでには左程の時間を要せず
パルスメータ製造に特化したベンチャー企業「CHAOSISTECK」が
真カオス学会との共同研究で進めていた
カオスマッピングビジュアライザを用いたブレインスキャンを
非公式とはいえ被疑者の精神鑑定に於いて早期に試験導入出来たのは
真カオス学会によるロビイング史上最大の成果だった
ブレインスキャンにより初めて露わとなった被疑者の脳内
高密度立体写像として映し出された
壺型繊維塊の一端から萌出する触腕の奥には
眼球状の可動体が蠢き
モニター越しに此方側を見つめている
この既視感は日本の伝統漁法「蛸壺」を想起させるフォルム故か…
蛸壺は「Abyss」と命名された
真カオス学会に引き渡された被疑者は被験者となり拘束され
リアルタイムカオスマッピングによるモニタリング開始から数時間後
Abyss を起点として送信されていると思しき「何か」が写像化された
被験者の精神混沌の深化と比例するように
脳内外を行き来する信号的「何か」の写像化頻度は増し
902日後に狂死する瞬間まで確認されている
真カオス学会に所属する宗教学者が提唱する
Abyss の機能に関する仮説に記された一節
「信者の精神混沌深度を観測し崇拝する神へ送信する概念的器官」
それは現在の科学技術では立証不可能な領域であったが
全ての人類の脳内に非アクティブな Abyss は存在し
人為的覚醒を促す事で人間の余剰能力解放を可能とさせる実証実験は進み
世界中で確実な成果が報告されると同時に
Abyss のアクティベートリアクションに起因する
邪神崇拝者の増大に拍車をかけた
世界政府をも懐柔し妄信的に推し進められた Abyss の人為的覚醒は
各地で余剰能力解放者のクラスタを形成させ
クラスタ密度がある一定の閾値を超えた瞬間
人為的操作を必要としない覚醒の連鎖が始まった
瞬く間に世界はある種の巨大な宗教戦争的様相を呈して行くが
8年後
受肉条件に達し現世に顕現せしめた超古代の邪神により
人類の歴史と共に全てが消失する事となる
邪神の名は
Cthulhu
終
壮大なる神話体系のこの世界の片隅に的1エピソードになったらいいな
とか思いつつ
クトゥルフもの根付彫ってみるよ
六面図
わー見てんなー
蛸壺からニュルニュル感
今回紐を通した画像撮り忘れ
触腕のブリッジになってる所が紐穴です
くわーっ
血走ってんなー
すっごい見てんなー
鹿角とユーカリナッツのマリアージュ…
やっぱ見てんなー
以前彫った根付「野槌」の時に初めて使用したユーカリナッツを
今回は表面を削ぎ薄皮一枚剥けた状態をしつこく磨いたもの
なんとなくな筋線維風の肉芽感あると思う
いつもの「下から煽ると大体カッコ良くなる理論」に則って撮った一枚
だが煽り足らず…
根付袋は柄生地被せずシンプルに黒べっちんのみ
サイズ的にはこんな感じだけど
コロコロ丸いんでそこそこボリューミー
根付「観測器」完成です
この根付は現在函館蔦屋書店の美術書エリアで展開されております
クトゥルフをフックとしたブックフェアにて展示販売中
テーマは「深淵」という事でクトゥルフのみならず
異形の者達にスポットを当てたブックフェアとなっているそうで
期間中至水も会場へ観に行こうと思いますが
根付と一緒に展示されているダラダラと長文な妄想奇譚を
もし立ち読んでくれている方がいたならば
周囲には感涙止まらず一人咽び泣くおっさんがいる筈
そいつが至水です
そっとしておいてやってください
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