2018年5月13日日曜日

Small articles : No.035

提げ 『 後神 』
素材:鹿角、赤瑪瑙、黒水牛角



カワイイの真理を求め
目隠しで迷い彷徨った猫磨大師連続三態彫りを終え
さて次はお楽しみ妖怪彫りタイムですよと
ジャガーバックス「日本妖怪図鑑」を流し読みしていて
ふと目に留まったのが
「うしろ神」

原典である筈の
鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に書かれているキャプションは

うしろ神は臆病神につきたる神也
前にあるかとすれば忽焉として後にありて
人のうしろがみをひくといへり

臆病になり前へ進む事を躊躇させるのは後神に後ろ髪を引かれるから
という意味でしょうか

では彫りましょう♪

と、ここで
ある疑問が浮上します

石燕の画ですっごい気になったのが
胴体に巻かれた細い帯?紐?

色々ググってみても其処に触れている文章を見つけられず
結果思い当たったのが
コレって「おんぶ紐」なのでは?と

そして

背の赤子 うらめしと引く うしろ髪

こんな句とともに後神の妄想設定が加速してしまい・・・

彫ります





鹿角です 長いです
紐穴の関係で根付にするには細いよなと
至水的には紐穴は大きくしたいので
提げとして製作進めます





四面図
吊り下げて撮影しているもので
上下からの画像が無いの・・・





自立しないので撮影の為に簡易スタンドを御用意しました

石燕の妖怪画みたいに柳の樹型スタンドにすりゃいいじゃん?
って思ったでしょう?

もうそうなると「提げ」の価格じゃなくなるです
とかいう下世話な銭話は心の奥底に押し留めます
留まってないけども





提げるとこんな感じ





色んな角度から
代り映えしない画ですが御覧あれ





この角度ならば
仰け反っている女性だという事がお分かりだろうか





母と
赤子・・・





ではそろそろ

石燕の「後神」で気になった「おんぶ紐らしき帯」をフックとして
妄想繰り広げた末の至水版「後神」の設定を・・・

ですが

実は重く悲しい母子のお話になってしまいます



「うしろ髪」

三年にわたる天候不良により米の不作が続くなか年貢の徴収は厳しく
日に二度の飯でさえままならない極貧の農村において
子を産み育てるという事にどれだけの幸運が必要か

昨晩も
子を身籠った若い娘が末体力乏しく
病に伏せる事ひと月あまり
終ぞ息を引き取った

翌朝早く母子の亡骸は村外れの道沿い
柳の幼木が生える傍に
親族により手厚く埋葬される事となる

あの母子が亡くなってから早十年

傍らにあった柳の幼木も樹高二丈弱には育ち
ゆるやかな風にも枝垂れを靡かせていた

ここ数年豊作が続き赤子の出生率も上がっている
十年前の出来事を霞めるほどに村は活気に満ちていた

おんぶ紐で子を背負い村外れの道を畑仕事へ向かう若い娘
母となったその娘は
十年前自らがまだ幼い頃の記憶
隣家の母子を帰らぬ者とした傷ましい出来事を決して忘れず
柳の前を通る度その悲しみを自らに重ね手を合わせていた

今朝も柳の前で目を瞑り一頻り手を合わせていると
不意に背の赤子がきゃっきゃと笑い
結わえ上げた黒髪の襟足に残る後れ毛を引いた

アハハ いたずらはいかんよ

肩越しに声をかけ再び畑へ向かい歩き始めた
笑顔の母の背で赤子は眠っている

家を出る前
背負われた傍からずっと
赤子は母の背ですやすやと眠り続けていたのだ

初夏の穏やかな朝に風も無く
それでも柳はさらさらと枝垂れを揺らしていた

背の赤子 うらめしと引く うしろ髪


その手に我が子を抱けなかった母の無念は後神となり
柳の傍を通る母子の背後に現れ出で
頭頂に赤子の大きく円らな瞳を開かせると
今生に触れようと手を伸ばし
無邪気にうしろ髪を引くのです





きゃっきゃっ
提げ「後髪」完成です

ちょっとここで
「日本妖怪図鑑」の解説分をそのまま丸々引用してみます

昔から「うしろがみをひかれる」といういいかたがある。
とても仲のよい友だちや兄弟やお父さん
お母さんなどとわかれなければならないとき
どこからともなく
うしろ神がやってくるという。
わかれるとき、なぜか、かみの毛をひかれるような気がして
わかれたくない気もちにさせるのだ。
うしろ神は
だから人間どうしがいつも仲よくすることをねがう
よい妖怪だ。

・・・うん

妖怪大好きのちいさなお友達
そしてこれから妖怪好きになってほしいキッズにもわかるように
ひらがな主体で書かれたの愛溢れる解説文です

最期の「よい妖怪だ」とか
もう、ね、LOVEが溢れてますよ(笑)

原典ともいえる妖怪図鑑的石燕の「今昔百鬼拾遺」とは
意味合いは違えど
「うしろがみをひかれる」
という言葉をフックにした妖怪話です



で、まぁ、今回も根付のモチーフ問題
「縁起」とかね
色々と考えさせられる作となったのですが

至水的には
我が子に対する母の深い愛と赤子の今生への無垢な羨望
をテーマとして

子を身籠るも亡くなってしまった母親とその体に宿した赤子が
今生での母と子の絆の象徴「おんぶ紐」によって強く繋がり
永遠に二人で一つとなった霊であるところの
「後髪」

という解釈なのでした

長々と長々とお付き合い頂きありがとうございました



次はまた例の猫達磨がですね
とうとう・・・(汗)
はい



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