2016/04/02

緒締 其ノ拾漆

『惚レタアノ娘ヲ追イカケタイ』
素材 : 鹿角、黒檀



さぁさぁ
製作着手してから完成まで
足掛け七ヶ月もかけちゃった根付

「 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 」

揃いの緒締の投稿で
いよいよフィナーレを迎えちゃいますよ


先ずは元ネタ解説から

「化物婚礼絵巻」は
根付の投稿前編で御紹介した通り
13のチャプターに分かれておりまして

そのチャプター4
「婿ヨリ結納贈ル図」
に描かれている

自ら飾り台を抱え花嫁宅へ向かう
結納の品であるところの
「化鯛」
これを揃いの緒締にしてしまおうと
妄想設定構築します

・・・・・

花嫁宅で飾り台に乗り結納の品の一部と化した化鯛であったが
ふと目にした花嫁「白菊」の美しさに一目惚れしてしまい

「自分に嘘はつけないのサ」

「もうどうなってもイイ」

「白菊ラヴュー♪」

刹那
飾り台を抱え走り出す真っ赤な化鯛
果たして運命の行き着く先は・・・

そんな緒締ですLOL




六面図
インド茜で赤く染めてます




走る鯛を自立出来る意匠に出来なかったので
緒締なのに飾り台というか自立支援ユニットを製作
これで撮影も楽チンなのよ




紐が通るとこんな感じに




別角度からも御覧あそばせ




根付と合わせるとこんなですよ♪



さてさて
恋は盲目化鯛のおはなし

飾り台を抱え花嫁宅を飛び出した化鯛は
白菊の婚礼行列の後を追います

化鯛 「待ってておくれスゥイートハニー白菊!」

なんとか追いついた化鯛

化鯛 「白菊っ!オレの愛の詩を聞いておくれ」
白菊 「What's?」

しかし体力の限界(乾いてきちゃったし)行列から引き離される化鯛

化鯛 「しーらーぎーくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
白菊 「はて?今のは一体・・・」

果たしてこの後花婿邸では
ダスティンホフマンばりの卒業展開になったのか・・・

多分無理
(涙)




哀れ化鯛の恋ぞ散るなり
緒締「惚レタアノ娘ヲ追イカケタイ」完成です

という事で
長々と長々とお付き合い頂きありがとうございました

この七ヶ月間Galleryにも御迷惑御心配かけっぱなし

そしてなによりも

忍耐強く待ちに待ち続けて頂いたお客様に
感謝の気持ちをお伝えしたい

本当にありがとうございました
(寝下座状態でタイプしています・・・という体で)


これにて
根付「 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 」



でございます



根付 其ノ漆拾陸 《 後編 》

『 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 』
素材:鹿角、黒檀


さて前編に引き続き
いろいろあってなんとか完成まで漕ぎ着けた
化物婚礼行列図根付

早速御覧あれ~(涙)



鹿角です
今回は彫りの途中で濃縮ヤシャ液を塗り塗りし
刃傷やディテールの確認をしながら作業を進めてみました
陰影がつき形が把握しやすいので安心感が増します
白一色だと造形迷子に陥ったりするのですよ



六面図
根付全体のフォルムを三日月状に反らせたかったので
行列の後方にいるキャラクタは別造して接いでいます
結構邪道な事してますです



では行列に参加している化物の皆様を御紹介致しましょう


先ず行列を先導するのは露払い鬼
「鬼龍院 爲右エ門」
(きりゅういん ためえもん)

遥か昔
嫉妬の呪により鬼の子を身篭った豪族の娘の末裔五十代目
子々孫々鬼の血は鬼龍院家の長兄に巨大な体躯と剛力を与え
化物相撲では負け知らず
名主の家の婚礼行列には露払いとして引っ張り凧なのです



露払い鬼の足元を照らすのは化提灯
「一」
(ひぃ)

婚礼行列には縁起が良いとされる
八本の化提灯を帯同するのが習わしとなっています
因みに八本目の名は「八」(やぁ)



そして行列の主役である初々しい化物花嫁
「千穀谷 白菊」
(せんごくや しらぎく)

通称「お菊ちゃん」
先天性の病「ねぶとり症候群」を患っており
気を抜くと「妖怪ねぶとり」の如く体が瞬時に肥大化してしまいます
普段は体の形状を維持する為に拘束着を着込んでいるのですが
今日は待ちに待った嫁入りの日
花嫁衣裳で駕籠に乗り込むや否や緊張の糸が解れて
ミッチミチに肥大化しちゃった♪
うふふふふ



首が長ーい駕籠かきの先棒
「抜首 轆朗」
(ぬけくび ろくろう)

抜け首の血を受け継ぐ一族の出で
博打好きが高じて勘当されたという
正に「雲助」である
なんとなく辺りの風景が変だぞと
最初に気付いたのは轆朗である



駕籠かきの後棒はハイブリッドキメラコンビ
 「蛙池 田三」 と 「獅子頭 獣三」
(かわずいけ でんぞう)      (ししがしら じゅうぞう)

異母兄弟であったが力仕事に有利な体を得る為
増体組織融合術を受けツインヘッドツインズと成った
実は田三
へタレでサボり癖のある獣三に対する鬱憤が溜まる一方で
融合術を受けた事を後悔しているのだ



花嫁を呑み込んだ乗せた化駕籠
「朧眼號」
(おぼろめごう)

化生き人形師が酔狂で拵えた只の駕籠の筈であったが
いつもの癖で魂入れをしてしまったため化駕籠化してしまい・・・
普段は裏の一つ目面の様に蠢いているものの
「中から簾窓を開けられる」等
駕籠としての機能を働かされてしまうと
表の二つ目面の様に固まってしまいます



縁起が良いという事で必ず婚礼行列に呼ばれる鶴亀夫妻

「千歳矢 鶴奴」 「万屋 亀乃丞」
(ちとせや つるやっこ)               (よろずや かめのじょう)

別姓を名乗っているがこれは芸名
鶴奴は化物界一の人気芸者であり
亀乃丞は化物界一の人気舞台役者である
そして化物界随一のおしどり夫婦と評判なのである



千穀谷の家に長いこと仕えている使用人
「捨助」
(すてすけ)

身寄りは無く秀でた能力も無い最下層化物ではあるが
箱入り娘の世話役として
赤子の頃より見守り続けて来た
お菊ちゃんの嫁入りを我が事の様に喜び
人目も憚らず感涙するというナイスなエピソードを残す
当然嫁入り道具を担ぐのは
「あっしの仕事でさぁ」
でまた涙がポロリ



そして最後に
おや?
婚礼行列を追いかけてくる赤いヤツが・・・
コイツは揃いの緒締なヤーツ
果たして一体何者なのか?
それは次の投稿で明らかになるのであった



今回の「化物」とは?
立ち位置としては
何か特定の「妖怪」というものではなく
特異な能力を得た人種、亜人種、デミヒューマン的な
「ヒト」側から見れば所謂「化物」な風体の者達としてみました
人間界との接触は極力避け
彼等は彼等のコミューンを形成し生活しています
という設定です



婚礼行列後方の足元には
はらりと開いた絵巻物が・・・
「化物婚礼絵巻」の中では新郎邸に向かっていた行列が
何故かドロドロと現世に抜け出して来てしまったの?
という意匠なのでした
で爲右エ門や轆朗は「おや?」という表情をしているのですね



過去製作した中で最も巨大
最長の根付になりました
なもんで
化駕籠の裏にある一つ目面の口から
二本まとめて紐を出せるのですが
これだけ長い根付を一点で支えるとなると
絶対にぐらついて正位置を保てないので
図の様にニ箇所から紐を出せるようにしています
これで装着した際に水平を保てる様になりました
勿論実用を大前提として製作しております
根付だもの



ダメ押しで残りの色んなショットおかわり召し上がれ♪



製作着手してから足掛け七ヶ月(涙)
根付「 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 」完成です

流石に七ヶ月もかけちゃうとですね
俺設定も熟々に熟して詰め込みまくり
いっぱいいっぱい書いちゃいますよねー

よし
次は締めくくり

揃いの緒締の投稿
で大団円を迎えよう!

続く



根付 其ノ漆拾陸 《 前編 》

『 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 』
素材:鹿角、黒檀



長かった
とにかく色々ありすぎて長かった

・・・・・

「百鬼夜行根付」の製作依頼
そのお話を頂いたのはもう二年前くらいでしょうか?

もう大好物ですし喜んでお引き受けさせて頂いたのですが
なんやかんやで時は過ぎ

昨年の六月にGallery花影抄で開催された展覧会に行き
御注文頂いたお客様と対面でお話をさせて頂いた際に
百鬼夜行の意匠を

化物達の結婚について
結婚申し込みから出産祝いの酒宴まで
最後には何故か宝船が登場し完となる
13のチャプターで構成された絵巻物
「化物婚礼絵巻」にしませんか

という至水の御提案を快諾頂き
八月中の完成予定として
やっとやっとで製作が開始されたのでした


しかし「化物婚礼絵巻」については
なかなかネット上で詳しい解説をされているところが無く
やっと見つけたコチラのMOOK本
洋泉社より発行されている
「百鬼夜行と魑魅魍魎」が大変詳しく
カラーの図版もいっぱいでとても参考になりました
感謝です♪と共にオススメです♪


その中で選んだのが
チャプター9の「婚礼行列図」
新婦が新郎の家へ向かう場面です


そして当初は一つの根付として製作するという計画だったのですが
行列に参加するキャラクタをそれぞれ
「緒締」と「提げ」と「根付」に分けて製作する等
色々と変更を重ね描いた下絵がコチラ
新婦の乗る「駕籠」を根付にして
「鬼」「鶴」「亀」「提灯」「荷物持ち」はそれぞれ提げとして製作
「鯛」は緒締です

ところがさらに色々と紆余曲折迷走し・・・

これは偏に至水の至らなさ
読みの甘さに起因するところであり
本当に申し訳なさ過ぎで

結局最終的には
やはり一つの根付としてまとめるという案に立ち戻り
ようやく鹿角で彫り始めるに至った訳でございます

この時点が既に完成予定日過ぎの昨年九月頃・・・

そこから更に完成に漕ぎ着けた今年三月までの足掛け七ヶ月

もう色々ありすぎて此処では書けますぇん(涙)


それでは
お待たせ致しました

そんなこんなで完成した

『 化物婚礼絵巻 婚礼行列図 』

ごゆるりと御観覧下さいませ
っと

後編に続きます!