素材 : 鹿角、黒檀
人が死に肉の器を抜け出た魂はあの世を目指す
善行を積んだ者は極楽浄土へ招き入れられ
悪行を重ねた者は地獄で閻魔の裁きを受ける
但し未練を残し命を絶たれた者の魂は別だ
怨みに駆られ縛霊となりこの世に居座り続ける事になる
とりわけ磔獄門に処された罪人の執着は尋常ではない
今日は久しぶりに鈴ヶ森の刑場で罪人が磔にされる
江戸市中で火付けと強盗を繰り返し
上方へ逃れんと素性を偽り立ち入った箱根の関所で下手を打ち
役人までをも手にかけ延べ四十四人を惨殺した大悪党だ
槍が左脇腹を五度貫いた所で事切れた罪人の魂は
罪木に括られた肉体からズルリ滑り落ちた
事切れても尚槍を突き続けられる自らの磔を見上げながら
身を捩らせ怨怒の涙を流し地べたをのたうつ罪人の魂
罪の重さにより磔のまま三日二晩晒されたのちの斬首刑
獄門に処され晒された首が朽ちる頃には
紛うことなき縛霊と成り果てる
筈であった
その夜
この世を呪い縛霊と成り始めた罪人の魂の眼前に
轟々と燃え盛る焔塊を牽いた火車が現れた
獄卒か?
這いずる罪人の魂を見下ろし二ヤリとほくそ笑んだ火車は
磔られた亡骸を罪木から引っ剥がし焔塊に投げ入れた
火焔の狭間に炭化したサレコウベがゆらりと見えた刹那
罪人の魂は鈴ヶ森の刑場から
地獄の広大な審判の間へと突き堕とされた
取り乱す罪人の魂を睨みつけ閻魔が嬉しそうに言う
「貴様裁き甲斐のある亡者だな」
縛霊と成り得る大罪人の亡骸を荼毘に付し
罪深い魂を強制的に地獄に送る
それが火車の仕事だ
という訳で毎度の妄想設定の火車ですよ
火車=猫又説とか
鳥山石燕の猫面火車(いやコレもかっこえぇ)とか
Gallery花影抄ではかぶさんが
猫又絡みの火車を既に手掛けておられる様に
火車と言えば猫なのですが
根付「火車」完成です
毎回製作に入る前にモチーフについて色々と調べたりするのですが
火車は色々と解釈の幅が広く取れそうで
どの設定を頂こうか散々迷い
結局火の玉牽いてる火車をベースに彫りましたが
やっぱ亡骸を小脇に抱えた鳥山石燕版の猫面火車も超かっこえぇので
そっちもいつか彫りたいですね
と
今何気に気づいてしまったのですが
次彫る根付って其ノ百じゃないですか
厳密に言えば未完の作も数に入ってるので
百個目という事でもないのですが
一応ブログのナンバリングで行けば其ノ百になる訳で
いやぁ
既に次公開の根付は彫り上がっているのですが
まさか記念すべき其の百の根付がアイツになろうとは・・・
続く(涙)
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