素材 :鹿角、黒水牛角、鯨歯、ピューター、インプラント フィクスチャー
昨年Galleryより
とある根付製作依頼のお話を頂いていて
題材は「インプラント根付」
インプラントを・・・根付に・・・・・?
え?
どゆこと?
で詳しく内容を聞いてみると
インプラント治療を受けたお客様が
自らの施術部位と同じ場所にインプラントを施した髑髏の根付
を御注文してくださったとの事
更に
お客様持込の実物のフィクスチャー
(インプラントで歯槽骨に埋め込む歯根の代わりになるパーツ)
を根付に絡ませるという御依頼です
おー!
髑髏の根付と言えば定番の「野晒し」があるではないですか
しかも輪廻転生、生命の再生の隠喩まで付いてますよ
て事は歯根再生術式であるインプラントとは
再生繋がり・・・ですよね?
よしよし無理矢理上手く繋がったところで
早速彫り始めますよ
鹿角です
お客様持込のフィクスチャーは
前歯でガッチリ噛みしめさせる事にしました
六面図
こちらがお客様持込のフィクスチャー(実物)
フィクスチャーは螺子を切った金属パーツなので
根付を装着した際に擦れて衣服を傷めないように
前歯より突出させない位置に留めます
さてここで一つ問題発生
下顎裏面よりセットしたフィクスチャーの固定と脱離防止の為
「何か」でバッキングしなければなりません
で、考えたのがコレ
黒水牛角製の蝸牛の殻と
鯨歯製の蛞蝓ちゃん
フィクスチャーを裏から押さえるように
蝸牛の殻パーツを象嵌しバッキング完了
これでフィクスチャーの脱離は防止出来ます
頭頂部には蛞蝓を配します
果たして此奴は蝸牛の殻を棄て蛞蝓と成ったのか
はたまた蝸牛と成り生きるべく殻を求め進む蛞蝓なのか
これもまた転生再生繋がり・・・
想像を膨らませ楽しんで頂きたいところです
では根付の顎骨に施されたインプラントを見ていきましょう
(御注文頂いたお客様が実際に施術された部位になります)
下顎右側の4,6,7番がインプラント施術部位で
4~7番の連結冠が乗っています
本来歯槽骨側面からフィクスチャーが見える事は無いのですが
それでは何処が「インプラントな根付」なのか分からないので
歯槽骨が退縮しフィクスチャーが露出してしまった風にしてみました
反対側、上顎左側の4,5,6番がインプラント施術部位で
こちらは上部構造体をアバットメントごと撤去した状態
フィクスチャーのプラットフォームが見える様に象嵌しています
今回象嵌したフィクスチャーパーツの素材には
ピューター(錫合金)を使用しています
実は上顎左側の1,2番もインプラント施術部位なのですが
此処を加工してしまうと一本だけ残された
上顎左側3番の破損リスクが跳ね上がる為
意識的に他の歯牙よりも染めを落とし白く強調して
「天然歯ではないよメタルボンドだよ!」
「これはインプラントの上部構造体なんだよー!」
と主張させています
同じく下顎右側の4~7番も染めを落とし
「天然歯ではないよハイブリッドブリッジだよ!」
となっている訳なのです
大きさはこのくらい
装着時に下を向く様想定した紐穴の位置になっています
再生隠喩てんこ盛り♪
根付「野晒す」完成です
あと最後に
作題が「野晒し」ではなく「野晒す」な件について
「野晒し」と聞くと
行き倒れ風雨に晒され・・・やがて骨となる
なイメージがありませんか?
自然の成りゆきというか、勝手に朽ちていくというか・・・
でも今回は「インプラント」が主題なので
能動的再生な意味で
前向きな野晒し!
「野晒す」と
(伝われ~~~♪)
あーっともう一つ最後に
実は根付「野晒す」の他に
三ッ揃えになる緒締と提物の前飾りも製作依頼されているので
続けてブログ投稿しちゃうよ!
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