『 Mukuro Oni 』
Material : Stag horn , Brass , Ebony
Size : 25
一年以上ぶりの鹿角指環です
無事お客様へお引渡し出来たという事で
投稿公開しますです
無事お客様へお引渡し出来たという事で
投稿公開しますです
前作「蔵王権現」を御注文頂いたお客様からのリクエストで
お題は鬼のスカルリングでした
鬼もスカルもシルバーリング界では
擦られ捲くっている題材ですよね
その中でキラリと光る一本にする為には・・・
オリジナリティ
作家性を試されるモチーフな訳です
で
こんなのを妄想
・・・・・・・
死水妄想奇譚
「骸ノ鬼」
私は某弱小出版社で記事を書いているライターで
名前は…
まぁ
伏せさせてください
扱うネタといえば心霊や怪現象とかオカルト系の
ほら、コンビニなんかで売られている
恐怖お蔵入り映像とか
その手の胡散臭い単発心霊本専門の
雇われライターなのです
昨日
送り主名のない分厚い封書が編集部に届きました
中には古びた原稿用紙が五十枚
人間が鬼に成るという「鬼憑き」について
人物名、地名入りで克明に書き込まれた手記でした
この手記が切っ掛けとなり
来月発刊されるオカルト雑誌で
鬼伝説の特集記事が組まれる事になったのです
当然の如く下っ端の私がネタの裏取りの役目を押し付けられ
この平成の御時世に祈祷お払いが生業であるという
手記に書かれていた現役のシャーマンにアポなし取材を敢行すべく
東北の某山近隣に位置する限界集落
白月村まで半日かけて遥遥やって来た訳です
村の外れ
白澤が祀られた社の近くにある
シャーマンが住むとされる民家を訪ねると
使用人らしき若い女性にそのまま祈祷場へと案内され
目の前には見た目九十は超えているであろう老婆が座っていました
まるで私の来訪が予定されていたような…
妙な感覚はさておき
早速自己紹介しつつ名刺を差し出すと
老シャーマンは取材内容も聞かぬまま
大昔から代々口伝されてきたという
忌まわしい流行病の話を始めました
その病を最初に発症したのは
村に住む成人したばかりの若者じゃった
始まりの症状は風邪同様で
発熱に倦怠感
次第に節々の軋みと肺に熱い痛みが拡がって
三日の後には高熱で皮膚は発赤
身体中の肉が隆起し出して
骨格から体つきまで
まるで別のモノに変わって行くようだったそうじゃ
そして五日の後
意識が混濁し一人では床から起き上がれなくなった若者の隆起した額から
一対の角状の骨隆が皮膚を裂き現れたのじゃ
村の薬師にも救いようがなく
白澤神の御加護を賜った儂の先祖様も休む事なく祈祷を続けたが
七日の後には身体の変容に耐えられず
とうとう亡くなってしまった
村人達が助かりようの無い流行病だと恐れ騒ぎ出したせいじゃろう
翌朝若者の遺体は人が寄り付かぬよう山に棄て置かれ
腐肉を剥ぎ亡骸を土に返さんと群がる烏や狗や蟲やらが
あっという間に若者の遺体を覆い隠したそうじゃ
村長は村の住人達に流行病が拡がらぬよう
暫くの間は決して若者の住いへは近付かず
山にも入るべからずと固く禁じたが
野晒しのままでは辛かろうと息子を不憫に思った父様が
骨くらいは残っている筈
せめて遺骨だけでも埋葬してやりたいと
皆が止めるのを振り切り山へ入ったが
骨片一つ見つけられなかった…
これが若者が発症してから十日間の出来事じゃ
半信半疑の私の目を見据え
老シャーマンは話し続けます
これは流行病ではない
正に「鬼憑き」なのだと
現世に漂う鬼の気は
気まぐれに血肉を纏った身体を欲し
肉体が若く充実した人間を選んで取り憑き
鬼としての顕現を試みる
人間は肉体の変化に耐え切れず息絶え
亡骸は朽ちて行くが鬼への変容は止まる事なく
鬼憑きから九日目には骸の鬼が出来上がり
真の鬼に成る日を待ちながら現世を彷徨い続けるのだと言うのです
更に信じ難い事ですが
その事件以降
数年に一度は「鬼憑き」を発症する者が現れ続けていて
流行病で亡くなった者の遺体は鬼に成らぬよう三日三晩焼かれ
骨が焼き残ったならば粉まで砕かれ川に流す
という風習が今も残っていると
そして未だに件の山周辺では
身の丈八尺半超えの赤黒い人影を見たという者が後を絶たず
それは人を鬼に変える流行病で最初に亡くなったあの若者に違いないと
村の住人達は絶対に山には近づかないとの事…
裏を取るとか信憑性とか真面目に考えたところで
いやこれも疫病に起因する伝承なのだろうとは思いつつ
そこそこ面白い記事にはなりそうだと
老シャーマンの取材を終えて家を出るともう日が沈んでいる
帰りのバス
最終は十六時だった…
ここに来るのに二時間かかった宿泊施設のある町まで
真っ暗な道を歩くなんて何時間かかるかわからないし
噂の人影に出くわしたらたまったもんじゃない
でもそれはそれでスクープだな…
いやいや無理せずシャーマンの婆さんとこにでも泊めてもらおう
何しろ村に着いた辺りから妙に熱っぽくて
風邪かなぁ…
え?
…まさか
鬼…憑き
・・・・・・・
終
なっ!
長ぇ-よ!話がよ!
という事で
(何がよ?)
鬼へ成る事を信じ彷徨う骸鬼状態の
鹿角指環を彫りますよ!
鹿角です
金属ではないので破損リスクの軽減を考えると
どうしても角の意匠は太短くしてしまいがちになります
Front view
Side view : right
Side view : left
Rear view
Size : 25
またもや銘は「死水」です
今回象嵌する目は「猫目」にするので
こんな工程で進めます
2mmの真鍮線にV字の溝を彫り
↓
溝の真中辺りにピンバイスで0.5mmの穴彫り
↓
0.5mm穴に嵌まるガイド付きの瞳孔パーツを
黒檀で作成し接着します
V成形しただけの瞳孔パーツを
そのまま真鍮線の溝に接着するよりは
こんな小さなガイドがあるだけでも
脱離防止効果は高まります
で、ドーム状に成形すれば
猫目状瞳孔の完成です
黒目パーツは白目に少し沈む様に嵌めてます
これで白目と黒目の境界に段差が出来
黒目の周囲に虹彩の如き陰影が現れます
共箱と一緒に
相も変わらずへタレな箱書(涙)
慣れません・・・
おぉ・・・なかなかの禍々しさよ
鹿角指環「骸鬼」完成です
お待たせ致しましたー
やっぱ指環彫りは楽しいやねー
また彫りましょうね
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