2015/01/10

Small articles : No.022

『EXT』
素材 : 鹿角、黒檀



インプラント治療を受けたお客様からの御注文 

「インプラント」をモチーフにした 
根付と緒締と提物の前飾りの三点セット 
に続きまして残るは提物の前飾りです 

お客様からの御要望は
「抜歯の時に使うヤットコの前飾り」・・・
そう抜歯鉗子ですね 

鉗子のみだと細身なので
デフォルメした抜歯シーンなんかを下絵で御提案したところ
またまた「お任せ」を頂いたので 
彫り始めます

が、緒締の「抜歯した大臼歯」はリアルな雰囲気に製作しているので
抜歯鉗子の形状を実物に近くして
抜歯したての大臼歯のサイズも手と比較して違和感無さげに小さく変更・・・ 

で仕上げたのがコチラ
鹿角彫り出しで
抜歯した大臼歯の齲蝕病巣の奥には黒檀を埋め込んでいますので 
後々染めが落ちても黒いままなのです


おー!色味も揃って渋くないですか?
前飾り「EXT」完成です

革製の提物は小島工房さん製作の品で御座います
(Gallery花影抄/根津の根付屋で御購入頂けます)


これでインプラントに纏わる三ツ揃えが完成し
この一式を 
「再生ノ理」 
と命名させて頂きました

スカル彫りは楽しいし
歯牙彫刻は懐かしいし
革提物は渋カッケーしで
なかなかに幸せな作業をさせて頂きました 
あとは御注文頂いたお客様が気に入ってくださり 
愛でて頂ければ・・・ 
さいこーです♪



※至水のインプラントについての知識は20数年前のモノですので
facebookで交流のある札歯の同級生
現役バリバリな歯科技工士の友人にも色々と相談させてもらいました 
感謝!ありがとねー!



※今回の三ツ揃え「再生ノ理」に関する投稿に於いて
色々と歯科用語を注釈無しで書かせて頂きました
「ググってみる」で御容赦くださいますよう 
何卒宜しく御願い致します(涙)



緒締 其ノ拾弐

『26』
素材 : 鹿角


インプラント治療を受けたお客様からの御注文で製作した

今回は根付だけではなく
揃いの緒締と提物の前飾りも一緒に
三点セットの御注文なのです

お客様からはイメージとして
「抜歯した歯牙の緒締」を という御要望だったのですが
「抜歯」は前飾で表現する予定なので

抜歯後にセットされる上部構造体
上顎左側第一大臼歯のセラミッククラウンを緒締に・・・
と御提案したところ「お任せ」を頂いたので早速製作開始
と思うも資料で頂いていたレントゲン画像を見て
あれ?上顎左側4,5,6番って連結冠じゃん!
と気付きまして・・・

最終的に当初の御要望に沿った
「抜歯した上顎左側第一大臼歯」の緒締に落ち着いた次第です


六面図

専門学校時代以来の歯牙彫刻
歯科技工士の専門学校では毎日毎日
エバンスと呼ばれる彫刻刀を用いて
棒状の石膏の先に歯牙彫刻をします
「歯牙の形状を頭に叩き込み体で覚えろ」な姿勢ですよ
うん
確かに憶えてるもんですねぇ・・・

もちろんこの緒締の素材は鹿角で石膏棒よりも遥かに固いですから
ほぼリューターにスチールバーで彫り出しています


紐通しが齲蝕病巣っぽい(笑)


こんな感じで紐が通ります

歯根はもっと先細りでシャープなイメージですが
緒締として実用を考えると・・・やはり太くしちゃいます
許してねん♪


抜きたてほやほや?
緒締「26」完成です

あと作題の「26」とは何ぞやの件
これはFDI方式で上顎左側第一大臼歯を表す数字なのでした




話変わって
皆さん歯科で抜歯した自分の歯・・・持ち帰ってますか?
至水は持ち帰ってます(笑)
これで緒締作るんだー♪
歯医者さんに持って帰りたい旨伝えておくと
衛生士さんがこんなにプリティなケースに入れて
笑顔で手渡してくれるよ!


根付 其ノ伍拾肆

『野晒す』
素材 :鹿角、黒水牛角、鯨歯、ピューター、インプラント フィクスチャー



昨年Galleryより 
とある根付製作依頼のお話を頂いていて 

題材は「インプラント根付」

インプラントを・・・根付に・・・・・?
え?
どゆこと? 

で詳しく内容を聞いてみると
インプラント治療を受けたお客様が 
自らの施術部位と同じ場所にインプラントを施した髑髏の根付 
を御注文してくださったとの事

更に
お客様持込の実物のフィクスチャー
(インプラントで歯槽骨に埋め込む歯根の代わりになるパーツ) 
を根付に絡ませるという御依頼です 

おー!
髑髏の根付と言えば定番の「野晒し」があるではないですか
しかも輪廻転生、生命の再生の隠喩まで付いてますよ 
て事は歯根再生術式であるインプラントとは 
再生繋がり・・・ですよね? 

よしよし無理矢理上手く繋がったところで
早速彫り始めますよ


鹿角です 
お客様持込のフィクスチャーは 
前歯でガッチリ噛みしめさせる事にしました

 
六面図 


こちらがお客様持込のフィクスチャー(実物)
 
フィクスチャーは螺子を切った金属パーツなので 
根付を装着した際に擦れて衣服を傷めないように 
前歯より突出させない位置に留めます 

さてここで一つ問題発生
下顎裏面よりセットしたフィクスチャーの固定と脱離防止の為 
「何か」でバッキングしなければなりません 

で、考えたのがコレ
黒水牛角製の蝸牛の殻と 
鯨歯製の蛞蝓ちゃん 


フィクスチャーを裏から押さえるように 
蝸牛の殻パーツを象嵌しバッキング完了 
これでフィクスチャーの脱離は防止出来ます

 
頭頂部には蛞蝓を配します 

果たして此奴は蝸牛の殻を棄て蛞蝓と成ったのか 
はたまた蝸牛と成り生きるべく殻を求め進む蛞蝓なのか 
これもまた転生再生繋がり・・・ 

想像を膨らませ楽しんで頂きたいところです 


では根付の顎骨に施されたインプラントを見ていきましょう
(御注文頂いたお客様が実際に施術された部位になります) 
下顎右側の4,6,7番がインプラント施術部位で 
4~7番の連結冠が乗っています 

本来歯槽骨側面からフィクスチャーが見える事は無いのですが 
それでは何処が「インプラントな根付」なのか分からないので 
歯槽骨が退縮しフィクスチャーが露出してしまった風にしてみました


反対側、上顎左側の4,5,6番がインプラント施術部位で 
こちらは上部構造体をアバットメントごと撤去した状態 
フィクスチャーのプラットフォームが見える様に象嵌しています 

今回象嵌したフィクスチャーパーツの素材には 
ピューター(錫合金)を使用しています 


実は上顎左側の1,2番もインプラント施術部位なのですが 
此処を加工してしまうと一本だけ残された 
上顎左側3番の破損リスクが跳ね上がる為 
意識的に他の歯牙よりも染めを落とし白く強調して 
「天然歯ではないよメタルボンドだよ!」 
「これはインプラントの上部構造体なんだよー!」 
と主張させています 

同じく下顎右側の4~7番も染めを落とし 
「天然歯ではないよハイブリッドブリッジだよ!」 
となっている訳なのです 


大きさはこのくらい 
装着時に下を向く様想定した紐穴の位置になっています 


再生隠喩てんこ盛り♪ 
根付「野晒す」完成です 

あと最後に
作題が「野晒し」ではなく「野晒す」な件について 

「野晒し」と聞くと
行き倒れ風雨に晒され・・・やがて骨となる
なイメージがありませんか? 
自然の成りゆきというか、勝手に朽ちていくというか・・・ 

でも今回は「インプラント」が主題なので
能動的再生な意味で 
前向きな野晒し! 
「野晒す」と 
(伝われ~~~♪) 


あーっともう一つ最後に
実は根付「野晒す」の他に
三ッ揃えになる緒締と提物の前飾りも製作依頼されているので 
続けてブログ投稿しちゃうよ! 


2015/01/01

HAPPY NEW YEAR 2015


あけまして
おめでとうございます

始まりました2015年


今年もなんとか
根付師として四度目の正月を迎える事ができました

これも偏に
お世話になっておりますGalleryの皆様
こんな至水の製作物をお買い求めくださり
支えて頂いたお客様方のおかげ・・・
感謝感謝で御座います

さて
昨年末より仕事納めとは全く無縁の
年越し根付彫りを敢行する筈が
コタツで寝落ちてしまい
目覚めると元旦朝の四時(汗)

頭にきたので即本寝に移行してしまいましたねぇ・・・
で元旦から作業再開の至水で御座います

今年は六月のあるイベントに向け
半年間の根付彫デスマーチを敢行せねばいけません
真っ白に燃え尽き
いや燃え尽きちゃいけません

2015年の至水に御期待下さいませ!!!

年末年始に髑髏を弄る
こいつぁ正月から縁起がイイ!