素材 : 鹿角、真鍮
毎年思い悩む干支ものですが
辰年もあと数日を残すのみとなった今頃になってやっと完成するという
しかも数年前に制作を依頼されていたものなのにですよ
辰年中にお渡し出来ないという為体
もっと早くに制作始めよという話です
申し訳なさすぎです
そして干支ものにはその時の(年の)自分を投影させてしまうのですが
正に2024年辰年の干支ものという仕上がりになりました
こんな感じに…
至水妄想奇譚
『師走に願う根付者』
十二年毎に巡り来る「辰年」には
現存する八百万の龍族より選出された一匹が「辰」の名を冠し
天災疫災人災も含めあらゆる事象に湧き上がる人間の念を
全て呑み込み胃の腑に納める事で現世の均衡を図る
それは干支を担う龍の責務であり
辰を完遂した龍が神龍と成り天へ昇るための試練でもあった
令和六年 辰年師走
日ノ本の地中深く丸々と腹を膨らませた龍が一匹
この一年を振り返りながら微睡んでいる
元旦より始まった千辛万苦に止めどなく噴出し渦巻く人間の負の念を
絶え間なく取りこぼす事なく呑み込み続けるという霊的負荷は
身に纏う八十一の金鱗を一枚また一枚と剥脱させ終に喉元の逆鱗を残すのみ
輝きを失い疲弊しきった姿からは正に苦行の一年であった事が伺い知れた
時同じくして
千辛万苦の辰年を生きる根付彫刻家が一人
この一年我が身に降りかかった諸々をぼんやりと思い返しながら
丸々と腹を膨らませた龍の緒締を彫っていた
根付と言えば古くから彫られている「福良雀」という意匠は
寒さに羽毛をふっくらと膨らませた丸々と可愛らしい雀の姿
福々しく根付らしい意匠の一つである
丸い理由は違えども
腹を膨らませ丸々とした龍の姿に
福良雀の福々しさを重ねて見てしまう根付者は
何の根拠も無く只々信じたい
金鱗を剥脱させるほどに胃の腑を膨満させた負の念を糧に
年を越し神龍と成った辰の龍は
万事に福を齎す福良龍に違いないのだと
そしてもうこれ以上
最後に残されたたった一枚の逆鱗までも剥脱させるほどの災いが
決して起こらぬようにと願いつつ…
辰年の師走は足早に過ぎていく
終
※作中に記された各名称は実在するものと一切関わりは無く
史実もまた異相な平行世界の物語です
という事でですね
なにか切実な…
詰め込んでしまいましたがしかし
きっと福良な龍になってくれるヤツですので
御覧あれ
六面図
配置を考え捏ね繰り回すうちにこの姿形に
数多ある龍族の一種という設定の元
洋な龍とも違うショートボディの和な龍にして
丸々と福良させてみました
地中深く丸々と腹を膨らませた龍が一匹…
日ノ本の霊的地脈の起点である富士山の直下にて撮影
なので真鍮管を仕込んでみました
紐を通してみるとこの感じでこのサイズ感
緒締としてはやや大きめ
緒締「福良龍」完成です
本当に辰年は千辛万苦でした
来年は良い年であってほしいと切に願います
ほんとに
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