2017/05/27

根付 其ノ玖拾捌

『 付喪れば立達磨 』
素材 : 鹿角、黒檀



あたしが達磨としてこの世に生まれたのは
もうかれこれ二百年前になりますかねぇ

最初の持ち主は直ぐにあたしに関心を無くしましてね
そこん家の蔵に投げ入れられてからどれだけ経ったか・・・

蔵の中には他にもお仲間が沢山居られまして
皆さん陽の目を見られず愚痴言い合って憂さ晴らしの毎日だったですよ

あーそうそう付喪神の話ね
実際にこの目で見たのは蔵に入って何十年経った頃だったかなぁ
隅っこに埋もれてた古木魚さんが動き出しましてね
百鬼夜行に行って来る言うですよ

そもそもね
あたしら「モノ」にはこの世に生まれ出でたその時から
ちゃんと魂が入っとるんですが
長い年月かければ自由に動き回れる
付喪神ってやつになれるって言うじゃないですか

いや噂では聞いていたんですけどね
実際にこの目で見ちゃった時はそりゃもう興奮しましたよ

その後も何品もの先輩方が付喪神になられましてね
いつかあたしもって夢見てたわけですよ

そしたら先日目ぇ覚ましたらね
今までにない感触を四つ感じたですよ

これって手足生えたんだろ?ってね

どうやらあたしもとうとう付喪神になれたぞと
喜び勇んで姿見さんに自分の姿写させてもらったんですよ

そしたらね

まぁあたしも手も足も無い張り子の達磨なもんですから
いつもお隣に居られた立達磨木彫置物さんみたいに
シュッとしたお御足生やしてですね
百鬼夜行を練り歩きてぇなぁなんて
ずっとずーっと恋憧れてたわけですよ?

いやぁ

でもねぇ


盛り過ぎちゃいませんかねぇ

どう思います?

付喪神化被害ファイルより
ケース9109
「絶対神の戯れにより不釣り合いな足を下賜された付喪神達磨の体験談」
全日本付喪神化被害物の会による収録です



って長いって!

前置き長いからっ!!

そして妄想が過ぎる!!!

という訳で納得いかない付喪神立達磨様
彫りますよー♪





鹿角です
今「そんなん立達磨じゃない」って思ったやつ!
一歩前へっ!
歯を食いしばれっ!
ほんとごめんなさい(涙)





六面図
今回のは「長いの彫ろう」と思ったのが事の始まりで
それも手元に縦長の桐箱があったからという理由で(汗)





「あたしゃとことん闘いますよ!」
「最高裁まで?もちろんですよ!!!」





「足っていうか下半身ごと盛りすぎなんですよ!」
「達磨Tシャツから下っ腹出ちゃってるじゃないですか!」
「小力じゃないですか!」
「いやキレてないですよ!」





「尻はキリッと引き締まったプリケツで良かったじゃないですかって?」
「いやそう言う問題んじゃないんですよ!」
「気付いたらいきなりふんどし穿かされててパワハラですよ!」
「あなたならどうです恥ずかしくないですか!」





「とにかくどこからどう見ても不釣り合いな下半身ですから!」
「あたしゃ納得出来んのですよ!」





そんな訳で達磨様は大層御立腹の御様子ですが
紐通しは至水の大好物な
大小ドッカリ開口した紐穴を設けておりますのよ♪





サイズはこんな感じ長いよ





あっ、でも今夜の百鬼夜行には参加します♪
根付「付喪れば立達磨」完成です



前々回に彫った「コレ買う人いるんですか?」的問題作の
根付「尻目」も無事にお買い上げ頂きまして
ホッと胸をなでおろしたばかりだと言うのに
更に今回こんな至水暴走し過ぎでしょと
各方面をハラハラさせる根付をリリースしたりで
最早「至水の根付はどこまで許されるのか」という
正に検証チキンレースの様相を呈している今日この頃なのですが

以前より色々な所で場面で度々書かせて頂いている
「根付は自由」
っていうのはこういう所だと思っていて
もちろん「根付」であるための明確なルールはあるのだけれど
その枠に収めつつそれでも尚「自由」だと思えるのは
こんな奴ら(尻目とかね)が受け入れてもらえる
いや広く受け入れてもらえている訳ではないのは解ってはいますけど
それでも欲してくれる方に巡り合えているという
こんな懐の深い美術工芸って根付しかなくないですか?

そしてそんな好き勝手に彫った根付をですよ
至水の自分よがりの産物をですよ
ハイ売りましょうと軽く英断出来ちゃうGalleryの懐の深さに驚愕
そして感謝なのです

バカでカッケェ根付が彫れる

そんな根付彫りに至水はなりたいの



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