2016/07/30

根付 其ノ捌拾弐

『かまわぬ』
素材 : 鹿角、黒檀



ワンダーフェスティバル2016[夏]に出品した根付です

至水が四年前に初めてディーラー参加した時
そう言えば出品したのは輪入道の根付だったですよ
  
至水のワンフェスと言えば輪入道
という訳じゃないけど輪入道
そうです
今年はフルサイズ型彫り根付の輪入道なのでした
  
でも只の輪入道じゃぁ無いんだぜぇ
  
・・・・・



「Big heart 輪入道 KAMAWANU ism」

最早自らの足そのものとも言える「火焔大車輪」を車検に出す為
加牟波理入道が経営する「頑張リモータース」へやって来た輪入道

ところが一週間前に予約を入れたにも関わらず
お願いしていた代車「朧車」がありません
というか代車が一台もありません

予約日を間違えたのは
加牟波理入道が経営する「頑張リモータース」の板金スタッフ兼配車係り
鎌鼬三兄弟の次男鎌鼬二郎でした

輪入道、加牟波理入道、鎌鼬三兄弟、皆が皆困り果てていたところ
鎌鼬三兄弟の長兄鎌鼬一郎がこう申し出ました

一郎 「弟のミスは兄弟全員のミスでヤス、うちら三人で責任取りヤス!」

と言うや否や鎌鼬三兄弟お決まりの
三位一体地獄風車のフォーメーション!!!

鎌鼬三兄弟 「輪入道様の代車キッチリ勤めさせて頂きヤス!」

輪入道を乗せた三位一体地獄風車は
更に回転を加速させやおら走り出しました

輪入道 「ぬ!!!」

思いの外ピーキーな三位一体地獄風車の走りにうろたえつつも

輪入道 「こ、これしか無いのじゃろう?」

加牟波理 「本当に申し訳ありやせんっ」

輪入道 「か、かまわぬ」

「かまわぬよ~~~~~」

と大人の対応

とっても寛大な輪入道なのでした



というお話
(長いよっ!)

じゃ彫りますよ♪




鹿角です
入道ヘッドと火焔のパーツは分離します





六面図





鼬三兄弟の「
入道の「
~っ!と思わず口から漏れちゃった「
作題「かまわぬ」の判じ絵になっています





さて今回の根付のもう一人(いや三人)の主人公である鎌鼬

鎌鼬の伝承は日本各地に幾つか点在しており
飛騨の丹生川流域では三体の悪神として伝えられています

一体目の神がターゲットとなる人間を転ばせ
二体目の神が刃で斬り付け
三体目の神が薬を塗り出血を止めると

で後に「あれ?切れてる!?」と気付くというこの伝承から
今回「頑張リモータースに勤務する鎌鼬」も三兄弟とさせて頂きました

鎌鼬三兄弟の長
鎌鼬 一郎
三兄弟の中では最も小さな刃を潰した鎌を持ち
ターゲットの脚を刈って転ばせます

鎌鼬三兄弟の次男
鎌鼬 ニ郎
右手の鎌は三兄弟中最大の大きさでキレッキレ
喧嘩っ早くしばしば兄に窘められる武闘派です

鎌鼬三兄弟の末弟
鎌鼬 三郎
メディカルバックを提げ
ニ郎が斬り付けた傷を流血する間もなく塗薬し痛みも感じさせません





サービスショット色々





サイズはこんな
今回大きさを意識して彫ったもので
40mm以内に収まっているんだぜ(胸張り)





紐は輪入道の首下から結び玉をすっぽりと格納し
「火焔+鎌鼬三兄弟」パーツと連結されます
「ぬゅうどう」根付と言い張り
輪入道ヘッドのみでの使用も可能です♪





寛大な輪入道の心意気に日本中が涙した
根付「かまわぬ」完成です

こちらの輪入道
販売価格340,000円という
ワンフェスに似つかわしくない可愛い気の無い価格にも関わらず
会場にて無事お買い上げ頂き
もう本当に感謝しかありませんです

今回ワンフェスに参加するにあたり
Gallery花影抄ブログで記事を書かせて頂きまして

・根付彫る至水の心情や如何に

・根付師が何故ワンフェスに・・・?

現代根付師の立ち居地の多様性というか
この辺はまたまとめて書きたいなと思っておりますが
併せて御一読頂ければ幸いでございます

ワンフェスに絡めて最後に誰得な事書いてしまいますと

「根付をもっとメジャーに」とか内からは良く聞くのですが
外からは相変わらず「根付って?」
「何所で買えるの?え!注文も出来るの!?」
という声は絶えず

現代根付は限られた人達の間での
とても小さくクローズドな世界という印象があって・・・
至水は根付極北の地北海道在住の人間なので
余計にそう感じるのかも知れません

ワンフェス出るのもブログ書くのもSNSで発信するのも
今現代に根付彫りを生業にしている人間がいる
という事をもっともっと知って欲しいなという思いからだったり

うーん・・・・・

やれる事はいっぱいあります

皆頑張ろうぜ!


2016/07/27

根付 其ノ捌拾壱

『夔神』
素材 : 鹿角、黒水牛角 



さて

先月「ぬっぺっぽう」の後に鱗モノやります言ってたヤツがコイツです
「キノカミ」と読みます



昨年、地元函館の北海道立函館美術館で開催された展覧会
を観に行きました

そこで
山梨県笛吹市春日居町鎮目に所在する
山梨岡神社で祀られている「夔神」を描いた掛軸が展示されており
もうこれに一目惚れ♪ 
(画像はwikiから拝借しました) 

で、色々調べてみると

山梨岡神社のHPからは ↓ 夔神信仰についての歴史、とか

wikiからは ↓ 「夔神」に纏わるその他諸々の逸話

「夔」の起源は夔龍とも呼ばれる龍神の一種である 
とか

山海経で描かれる一本足の牛の怪「夔牛」の話 
とか

山梨岡神社に祀られている一本足の神像は 
欠損した狛犬の像が「山海経」の「夔」と結びつけられたものである
とか

一本足は天から地上へ落ちる一本の雷を表すともいわれる 
とか

とかとか大量のキーワードを元に

掛軸に描かれた「夔神」を至水解釈してみると
「隻腕の牛面龍」 
であると

頭の下ゴロンとした塊は雲上で固くとぐろ巻き固まった龍の胴を表していて
雲の隙間からイカヅチの如く一本腕を突き下ろしている姿
・・・・・

という意匠を妄想し彫って行く事に!





鹿角です
角が枝分かれ分岐する又の根元を使っています





六面図
雲の隙間から一本足ならぬ一本腕がずどん!
鋭い爪を立て雨乞いの生贄「雌牛」を雲上へ引っ掴んで行きます





牛面龍!
キーワード「欠損した狛犬の像」からインスパイアされ
左の角は折れています





ぎゅうっと固くとぐろ巻き固まった胴体に鱗彫りフェスティバル(涙)





下からの煽り画は迫力増します
どろろーん





サイズはこんなでデカすぎです(笑)
笑ってる場合ではない・・・ 





因みに紐は裏表どちらからでも出せます
「お好きな表情の面を表にどうぞ」という仕様です





至水解釈妄想するは根付彫るより至福のひととき♪
根付「夔神」完成です

実は「鱗を捻じ伏せる」を裏テーマに挑んだ
異形の龍としての「夔神」でしたが
見事に返り討ち(涙)

またもや鱗に捻じ伏せられましたっ

結局時間は掛かりますが
「鱗一枚一枚丹念に研ぎ出す」
が、今の至水に出来る最善の鱗成形方っぽいです

がんばろ(滝涙)



ワンダーフェスティバル2016[夏]総括!!!




遅ればせながら

24日(日曜日)に開催された真夏のガレージキットの祭典
ワンダーフェスティバル2016[夏]
のまとめ投稿でございます


先ずは至水参加のブースへお立ち寄り頂いた皆様へ
本当にありがとうございましたと
感謝の気持ちイッパイの至水です

今年は昨年の夏よりも全然涼しく(とは言え暑いのですけど)
幕張メッセ会場内も「これはクーラー効いてるね」体感出来る程の過ごし易さ

当日は他所でも色々なイベントが開催されていたらしく
今年は会場内の人通りも少なめなのでは?と
参加ディーラーさん達がしきりにツィートしておりました
延べ入場者数は運営からの公式発表何人くらいだったのかなぁ

しかしながら
今年で参加三度目と回を重ねて参りますと
「至水に会いに来てやったぞ」
と、うち目掛けて来てくださるお客様も複数名居られまして

天上見てなきゃ涙がこぼれちゃう胸アツなワンフェスでございました

そして次々と眼前に現れた天上人達

自在置物ジュエリーを錬金する黒魔術師
吉岡武珍

鉄塊を骨肉に変性せしめるアーティスト
JUNK LAW
氏のHPはコチラhttp://www.junklaw.jp/index.html

妖怪をこよなく愛す根付マスター
和地一風

が、なんともう一人

根付ハイランダー
高木喜峰

をお連れになり降臨するという

目眩く瞬間の連続・・・



出品した根付「かまわぬ」も無事お買い上げ頂き
Galleryから幾度も御購入頂いているお客様でしたので
無理言いまして後日Galleryでお渡しという事快諾して頂き
ワンフェス終了まで展示可能になりました(感謝です!!!)



今回お話させて頂いた中で多かったのが

「胡桃のヤーツは無いのか!」

「量産根付あるかと思って期待してたんだぞ!」

「Galleryの販売ページいっつも空だな!」

勿論こんな語気荒げた物言いじゃありませんよ念のため(汗)

とか

三つ目はとりあえず置いといて
胡桃のヤーツと量産樹脂根付は来年考えなきゃなと

そしてなにより
折角来て頂いたのに販売物が高額品一点のみはマズイだろうと

事前告知で「遊びに来てね♪」なんて気軽に書いてしまいましたが
入場料払って来てくださっているのですから
更なるプレジャーを御用意してお迎えしなければならぬのです

もうこれは
来年も参加するしかないっしょや!
と、北の地で心に誓う至水なのでした

必ずや
また来年お会い致しましょう!!!



2016/07/23

ワンダーフェスティバル2016[夏]参戦!




唐突っ(汗)

唐突ですが今週末の24日(日曜日)
幕張メッセを会場に繰り広げられる
真夏のガレージキットの祭典
ワンダーフェスティバル2016[夏]にディーラー参加致します

ワンフェスについてはコチラ ↓ 参照ください
http://wf.kaiyodo.net/

今回で三度目の参戦なわけですが
相変わらず会期前日までジタバタしておりまして

なんとか三点ほど出品したいと思いつつも
ワンフェス用の量産根付など用意する余裕もなく
結局フルサイズの型彫り根付を一点のみ持って行くという・・・(涙)

ほぼほぼ一緒にディーラー参加する友人のお手伝いと化す予感漂っておりますが
まぁ至水の顔でも見に行ってやるかという奇特な方が居られましたら
是非是非会場まで遊びに来てやってくださいませ

卓番 
5-26-1
ディーラー名
「NorthStar/DeadPool」
でございます
 
それで、一体何を持って行くのかと?
では昨日完成したてほやほやのアイツを御覧あれ

根付「かまわぬ」

至水が初めてワンフェス参戦した際に販売した樹脂製量産根付が輪入道
至水のワンフェスと言えば輪入道
という訳ではないのだけれど輪入道

しかし今回は鹿角製

鎌鼬三兄弟三位一体の地獄風車の「かま」と
輪入道の「」と
つい出ちゃった「ぬ~」で
かまわぬの判じ絵となっております

果たしてこの意匠にどのようなストーリーが用意されているのか?
至水ブログ「悪魔ノ天秤」で近々公開致します
更新をお待ちあれ!!!

尚、根付「かまわぬ」は
ワンフェス価格 340,000円 での販売となります

おそらくワンフェスな価格設定からは桁外れに高額な為
会場でのお買い上げは叶わないかもしれません。

その際はGallery花影抄内至水販売ページでの取り扱いとなりますが
消費税プラスαが加算された販売額となりますので
良き御縁がありましたら会場にてお買い上げ頂ける事切に願っております

それでは皆様
お待ちしております♪

 

2016/07/10

根付 其ノ捌拾

『面蒐』
素材 : 鹿角



ぬっぺっぽう奇譚

顔体手足五体全てが常に不定形で不安定な彷徨う肉塊
雑踏を歩いても誰一人からも気取られる事はありません

何モノでもなさ過ぎるが故に物体として捉えられず
人間は彼の存在を認識把握出来ないのです

誰も自分に気付いてくれない

誰かと会話を楽しむ事も叶いません

ぬっぺっぽうにとって人間は
表情豊かに生を謳歌する羨むべき存在でした 

人間に似せようと笑ってみたり眉を顰めてみたり
幾らやっても表情を変える事が出来ません
  
そもそも顔が無いのですから

そうだ先ずは顔が欲しい

喜怒哀楽を手に入れたい
  
そんな思いから色々な表情の面を蒐める為
ぬっぺっぽうは今も彷徨い歩いているのだとか

・・・・・・・・・・
  
なんて悲しいお話を背負わせてしまいました
ごめんねぬっぺっぽう(涙)

でも幾ら面を装着しても君は気付かれない
だってそういうアヤカシなのだから

あぁ泣いちゃう

じゃぁ彫るね





六面図
鹿角のクラウンの部位を使用しています
ブヨブヨ肉塊感が気持ちイイんです♪





丁度クラウンの周縁部のヒダが指に見えたので
ぬっぺっぽうの左手として残しました

面打師の工房から面を頂戴し
ガラッと引き戸を開け外へ出て行くところです

不安定で不定形なぬっぺっぽうなので
下絵もなく彫り進めながら色々勢いで決まって行きます





女面の「姥」と「般若」に鬼神面の「長霊癋見」をゲットだぜ

人間には存在を認識されていないのですが
罪の意識からか頂戴した面は後ろ手に隠しちゃってます
だいじょぶ!誰も気付いていないよ!!!





色んな角度からドゾ





サイズはこんな
なんか至水の根付は最近大きめ・・・(汗)





根付紐の結び玉は
どっかり空いた紐穴に御納めください





ぬっぺっぽうはさびしんぼう
根付「面蒐」完成です



ブヨブヨの肉塊造形は至水の大好物♪
やっぱり妖怪は彫ってて楽しいよねー

次は

う 鱗モノですよ(汗)



2016/07/09

根付 其ノ漆拾玖

『招き猫又』
素材 : 黒檀、真鍮、黒水牛角



えーっと

確かコレ去年の末までには完成させるとか言ってたような・・・

気が・・・

ハイ

まぁイイでしょう


で、招き猫又です(汗)


稼業の運転資金を工面する為日々奔走している男
飼い猫の「たま」は歩くのも覚束なくなった老猫ですが
疲弊した主人の心を癒してくれる存在であり
互いに無くてはならない相棒なのでした

ある日男は悪徳高利貸しの甘い言葉に騙されて
多額の金子を貸し付けられてしまいます
勿論直ぐに払えなくなる事など先刻承知の高利貸し
端から男の稼業ごと丸っと剥ぎ取る算段です

ほどなくして全てを失った男は肺病を患い床に伏せてしまいます

医者に掛かる事も出来ず衰弱し薄れ行く意識の中
男が最後に見た光景は
歩くもままならない筈の老猫「たま」が
何所からか咥えて来た一両小判を
そっと主人の枕元に置く姿でした

数日後

街中の悪徳高貸しが次々と神隠しにあったり
残された大量の財産小判が何者かに持ち去られていたり
夜な夜な貧しい家の人の枕元に小判を置き去って行く義賊が現れたり

これ全て主人の無念を晴らす為
猫又に成った「たま」がやったってぇんじゃねぇのかい?
そんな噂が広がったり・・・


これが金を齎す猫として
所謂「招き猫」の由来になったとかならないとか
ならないから!

そんな招き猫又行ってみますよ



黒檀です
カキノキ科の黒檀ではなく所謂アフリカ黒檀(マメ科)です



六面図



悪徳高利貸シニ天誅ニャー!
顔洗いながら(笑)



見る角度で悪かったりブサかったりと表情が変わります



小判は真鍮製で
白目部分に象嵌した鏡面状に磨いた真鍮と質感を変える為
表面を粗してマットに仕上げています
ホントはサンドブラスター使って粗したいとこなのですが・・・



紐穴
巻いた二本の尾の中に結び玉を押し込めます



サイズはこんなデカイ(汗)
皆からデカイ言われた(汗汗)
うちの嫁からもデカイ言われた(汗汗汗)



色んな角度からボーナスショットのオマケです



義賊猫又悪を斬る!
根付「招き猫又」完成です

「普通に招き猫じゃダメなんですか!?」
そんな怒号が飛び交う中
(飛び交うの?)

敢えて言おう

至水の彫る猫は須らく猫又なのであると!

ホラ 至水は妖怪好きだからさぁ